2019年7月17日(水)

春秋

春秋
2019/7/11付
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ルネサンスの巨匠、ミケランジェロとレオナルド・ダ・ヴィンチはともにデッサンを重視した。前者は弟子にこう書いている。素描しなさい。素描しなさい、時間を無駄にしないで――。繰り返し説く様子を、三菱一号館美術館で一昨年あった展覧会の図録は紹介する。

▼形や陰影、質感などを注意深く見て、再現するための情報量をふくらませる。自然科学にも関心を向けたレオナルドは人体の解剖までして精密な素描を残した。科学的な視点がふんだんな彼に対し、ミケランジェロは人間の動きの力強さをとらえた。違いはあるが、鋭い視線を土台に理想の美を追求した点は共通している。

▼そうした人の観察力が、これからも敬意を払われ続けるだろうか。企業の採用面接では人工知能(AI)が応募者の表情をもとに性格を見極め始めた。脳波と心拍からAIで感情を読むシステムなど、人の観察眼に取って代わる新技術は毎日のように報じられている。芸術分野に入り込んでいくのも荒唐無稽ではあるまい。

▼観察力が衰えないかという危機感からだろうか。東大は6月から専門家を講師にドローイング(デッサン)の授業を始めた。文系、理系を問わず、学生に新しいものの見方を発見してもらうという。デッサンについてレオナルドは、仲間と一緒に描いて比較すると刺激になる、と語っている。助言を授業で実践できそうだ。

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