インドのAI医療に期待
SmartTimes BEENEXT ファウンダー・マネージングパートナー 佐藤輝英氏

コラム(ビジネス)
2019/7/10付
保存
共有
印刷
その他

インドでは医師の数が圧倒的に少なく、人口10万人あたりの医師数は約80人と、日本の3分の1といわれている。病院のクオリティーも千差万別で、富裕層が対象で最先端な施設をそろえた病院から設備の古い個人運営クリニックまで、相当のばらつきがある。大都市圏では交通渋滞の慢性化もあり、具合が悪い時に病院に行くのも一苦労だ。

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

そんな中、どこでも誰でも簡単にアクセスできる「クラウドクリニック」を旗印にスマートフォン診療の分野で快進撃を続ける会社がエムファインだ。利用者が体調や症状をアプリに入力し、やり取りに答えて自らの状態を伝える。問診票を双方向にすることで、より簡単にしたイメージだ。

その後は症状に対応可能な医師の一覧が表示され、その場で診療を受けられる。医師とはビデオや写真、音声、テキストでやり取りし、診断後に必要に応じて処方箋が発行される。

病状が重い場合やオンラインで診断が難しい場合は病院での面談も予約できる。最近では小児科や婦人科、皮膚科、整形外科に加えて呼吸器科、神経科などの医師を多数かかえ、実に20の診療科に対応している。家族がいる場合は家族メンバーごとにアカウントを切り替えられ、母親が子供の症状や診断履歴を管理することもできる。利用者は診療後もアプリでやりとりができるため、継続的なフォローアップも可能だ。

医師側のシステムの使い勝手も実によくできている。同社では人工知能(AI)をフル活用し、利用者の問診情報に基づいて病気を予測する。そして医師に複数の候補を表示したり、追加での確認点を示唆したり、適切な薬の候補を提示したりもする。

当然、最後は医師が診断を下すので、あくまでも補助情報という位置付けになる。それでも細かいデータを全部格納し、時間の経過とともにますます精度が高くなっていくことは容易に予想できる。

しかも情報の精度を高めるために世界中のメディカルジャーナルや関連記事を数百万の単位で読み込み、機械学習をさせているというから驚く。2017年にバンガロールで産声をあげた同社は、すでに150のトップクラスの病院と提携し、600人の医師をネットワーク化している。

その中にはアポロ病院やクラウドナイン病院といったインドの超大手病院も名を連ねている。病院経由で医師とつながりレベニューシェアをするため、病院側とのトラブルもない。最近ではオンラインの診療だけでなく、外来患者の診察時にも医師が率先してこのシステムを使い始める病院があるという。

利用者と医師、病院のすべてにメリットがあるモデルを構築する同社はAIの力で医療現場の効率を上げ、インド全域の医療サービス向上に大きく貢献していくことと思う。

[日経産業新聞2019年7月10日付]

「日経産業新聞」をお手元のデバイスで!

 スタートアップに関する連載や、業種別の最新動向をまとめ読みできる「日経産業新聞」が、PC・スマホ・タブレット全てのデバイスから閲覧できるようになりました。申し込み月無料でご利用いただけます。

 
保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]