2019年8月26日(月)

夢と利益 問われる両立
新風シリコンバレー SOZOベンチャーズ創業者 フィル・ウィックハム氏

コラム(ビジネス)
2019/7/9付
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SOZOベンチャーズの投資先である、ビジオ会議システムの米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズが4月18日にナスダック証券取引所に上場した。新規株式公開(IPO)価格の36ドルに対し、6月末時点で100ドルまで上昇した。今年最大のIPOの1つとなっている。

ベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの会長。データ解析やフィンテック、クラウドなどのIT(情報技術)のスタートアップに投資するSOZOベンチャーズを2011年に設立。

ベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの会長。データ解析やフィンテック、クラウドなどのIT(情報技術)のスタートアップに投資するSOZOベンチャーズを2011年に設立。

ズームの高株価の特徴は、その売上成長率の高さと、利益を確保している点にある。6月上旬に発表した同社の第1四半期の売り上げは前年比103%の伸びを示した。多くの若いステージで上場企業が大幅な赤字を垂れ流すなか、成長と利益のバランスを取ることができるビジネスモデルを確立している。

2つ目は、このファウンダーのエリック・ヤン氏がアジア人として上場を成功させていることだ。

同じ時期にIPOしたリフトやウーバーと比べると興味深い。

4月に上場したリフトはIPO価格が72ドルに対して、6月末時点で60ドル程度で推移し、時価総額はズームを下回っている。5月に上場したウーバーの株価も低迷しており、なかなか公開価格を上回る水準には届いていない。

ビジネスモデルや成長のステージが違うので、単純には比べることはできない。だが昨今のIPO市場は選別の時代に入っているといえる。上場後の株価の動きが順調に成長する会社とそうでない会社に二極化する傾向にある。

ベンチャーキャピタリストがビジネスモデルの発展のために赤字に寛容なのに対し、上場企業の投資家は成長性やビジネスの規模だけでなく、"利益"がどれくらいあるのかを厳しく見る傾向が強い。

ウーバーとリフトはいずれも巨額の赤字を伴った成長に対し、厳しい目線と株式市場で支持を想定以上に得られていないことがよくわかる事象だ。言い方を変えると、ズームは上場に適したビジネスモデルがあり、成長軌道のちょうど良いタイミングで上場できたとも言える。

ズームの競合はシスコシステムズやマイクロソフト(スカイプ)になる。ただズームは電話にビデオをつけるというコンセプトではなく、クラウドを生かしたコンテンツのストリーミングを新しい伝送技術を応用して新たなサービスを確立している。同社の技術は人々の生活を変えるインパクトが大きい。

VR(バーチャル・リアリティー)というと、にぎやかなゲームなどが言及されがちである。だが、もっと日常に潜んで普通になろうとしており、ズームこそVRを生かした代表的な技術革新のプロダクトだ。テレビ映像を使った会議やコミュニケーションは、すでに場所や時間を越えて、一つの空間を共有しているかのような錯覚を起こすくらいに技術レベルが上がり、実用性がある。

アバターやゲーム要素がなくても、十分にVRといえる。ズームはこうした将来の大きな夢と売り上げを現時点で両立している企業だ。この筋肉質な"ユニコーン"は、投資家冥利につきる理想的なベンチャーと言える。

[日経産業新聞2019年7月9日付]

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