ストリーミング、聴き放題広がる 楽曲選びより気分で消費へ
先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

2019/7/8付
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NIKKEI MJ

スマートフォンが変えた様々な生活スタイルの中でも、音楽消費は劇的に変化したひとつだ。筆者はストリーミング型の音楽サービスを利用して数年を経たが、自分の音楽消費の変化に驚かされる。

スポティファイはおすすめのプレイリストを数多く用意している

スポティファイはおすすめのプレイリストを数多く用意している

ダウンロード型サービスは楽曲や動画などのデータを作品単位で端末に取り込む際に課金する。対してストリーミング型は利用のつどネット経由でデータを受け取りながら再生し、月額使用料のように継続課金(サブスクリプション)する仕組みだ。結果として「聴き放題」「見放題」のサービスと結びついた。

ストリーミングを利用し続けることで、自分の音楽消費がアーティストや好みの楽曲、アルバムを指定して聴くスタイルから、プレイリスト中心のスタイルへと大きく変化したのを実感する。

プレイリストとはお気に入りの楽曲など集めて再生できる機能だ。リストは自分で作れるが、多くの場合はサービス提供者や他のユーザーが作ったプレイリストを選ぶ。

サービスの先駆けである「スポティファイ」なら4千万もの楽曲を聴き放題なだけに、自分好みを探すだけで手間がかかる。人気のプレイリストなら、アーティストはもちろんジャンル、テーマ、ムード(気分)にそって整理している。選曲は折り紙付きで任せればいい。「リラックスしたい」「高揚したい」など、気分だけでも豊富だ。

こう書くだけでも満腹感があるが、極めつきがある。「デイリーミックス」という自分専用プレイリストの提供だ。利用者の嗜好に合わせて人工知能(AI)が自動的に生成し、日々変化していく。

耳が空いていればつねに音楽を流していたい自分にとってこれ以上ない仕組みが整ってきたが、気になることがある。音楽がまるごとBGM、つまり環境音楽に変化してしまったことだ。

好みのアーティストや曲名を探すことがまれになった。プレイリストを通じて新たな楽曲と出合うが、いちいち記憶しない。楽曲やアーティストを意識する選択的消費から気分消費へ変わってきた。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

膨大な数のリスナーを擁するプレイリストの影響力は高まり、その分、アーティストや楽曲はもちろん、レコード会社、レーベルの力が弱まっていきかねない。気分を整えるのが目的なら楽曲さえ必要ない。実際、雨音や空港などのノイズを集めた人気プレイリストも生まれている。

聴き放題とプレイリストが組み合わさると、少しでも気分に合わなければスキップする。スポティファイのユーザーは平均4分に1回はスキップしているという。アルバム単位で買っていたころには、自分ももっと丹念に聴いていたはずなのだが。

データ分析からは、スキップ率を下げるにはイントロを15秒以下にする必要があるとされる。楽曲づくりも変わっていかざるをえない。

国内に限れば音楽ストリーミングサービスの利用者は、有料・無料を合わせても2千万人程度とまだ少ない。それでも世界の動向からすれば、ダウンロード型音楽サービスの雄だった「iTunes」終了の報とともに、音楽産業の姿そのものが変化しようとしているといえる。

[日経MJ2019年7月8日付]

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