ウェブデザインの思考法
SmartTimes ネットイヤーグループ社長 石黒不二代氏

2019/7/5付
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10年前には想像もできなかったことだが、今や私たちはウェブやアプリに囲まれて生活している。私はこれらの設計や構築を本業としているのだが、今日は改めてこの話をしよう。といっても利用者というよりも、私たちのクライアントである企業側の話だ。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

我が社の従業員の一人がウェブデザインの本を書いた。彼は自分自身で出版社を回り、企画を持ちかけた。ウェブのバイブルになりそうな出来栄えと私は思っているのだが、問題は彼がなぜ自ら企画したのかということだ。彼は様々なウェブやアプリのプロジェクトを経て、いつも「クライアントに思いが通じない」と悩んでいた。ウェブやアプリの設計には、様々な判断基準があるべきだが、クライアント、特に役員のようなトップマネジメントはデザインだけで判断をしてしまう傾向がある。

一般的なデザインには情緒と機能がある。コーヒーカップを例にとれば、格好いい、持ちやすい、おしゃれ、といった複数の選択基準を消費者が明確に持っている。しかしウェブは歴史が浅いため、感覚や品質が属人的になりやすい。それでは企業として失格だ。作ってみたが、どうも反応が悪いということになる。

書籍は機能性を分けている。ここでは専門的な言葉を使わず、見つけやすい、分かりやすい、使いやすい、覚えやすい、自分らしい、受け入れやすい、変えやすい、としておく。情緒性も装飾性、成熟度、態度、愛嬌(あいきょう)、品性、温度感が並ぶ。

大手金融機関のウェブを手がけた時、成熟度は若年層を狙った。その金融機関の既存顧客は富裕層だったが、それに留まっていては将来はない。新たに開拓するのは若年層と合意できた。ある大学の案件では、対外的なイメージは男臭くバンカラ。しかし、実際のヒアリングをしてみると都心、女子学生、国際交流などのワードが並んだ。これらクライアントにわかりやすい共通言語で合意できれば、情緒性の方針が立つ。

ブランディングの観点から企業ブランドを考えてみよう。ユニクロは今やグローバル企業と認識されている。ではユニクロの一般消費者の理解は、どうだろう。その魅力は以前には着やすい、暖かい、値段が安いと機能的なものが並んでいたはずだ。今では格好いい、スタイリッシュなど情緒的なものが加わっている。同じアパレルでも制服などを扱うブランドはほぼ機能性を優先するが、さらに大きな市場を求めるユニクロには機能も情緒も必要で、それを実践している。

「ウェブやアプリの開発に必要な要素を体系化してみた」。筆者の思いは、ここにある。なぜなら、それが判断を見落としなく、容易にするからだ。体系化、言葉を変えればフレームワークだ。ウェブやアプリを、もっと論理的に考えるフレームワークである。

[日経産業新聞2019年7月5日付]

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