2019年9月20日(金)

交通のCO2排出削減 切り札は「低炭素石油」か
Earth新潮流 三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚氏

2019/7/5付
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6月末の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)では、中国やブラジル、インドを含め世界の二酸化炭素(CO2)排出の6割以上を占める19カ国・地域が、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の着実な実施を確認した。

再生可能エネルギーや原子力などで電力の低炭素化が進み、産業やビルなどでは利用が進むだろう。ただ低炭素化にも限界はある。その典型が交通だ。航空機でも仏エアバスなどがバッテリー利用に取り組むが専ら短距離飛行だ。電池は重く、長距離となれば電池を運ぶようなものであり液体燃料の代わりは難しい。

低炭素の液体燃料として長い歴史を持つのがバイオ燃料だ。自動車向けでは1970年代以降、ブラジルが先行し、今では欧米や日本でもガソリンへの混入は一般的だ。航空燃料でも国際的な認証制度が整備されつつあり、商業利用の環境は整ってきた。

しかし、プラスチックの代替材料や発電燃料でもバイオ資源は注目されている。需要が膨らめば原料生産の立地条件が悪化し、コスト上昇は避けられない。

そこでもう一つの候補と浮上してきたのが、石油ベースの「低炭素燃料」だ。地中から自噴できる原油量は埋蔵量の2~3割とも言われ、CO2を油層に圧入し生産量を増やすEOR(石油増進回収法)と呼ばれる技術も使われている。

原油とCO2を入れ替えると考えればわかりやすい。原油1バレルの生産で0.3~0.5トンのCO2が地下に残るので、生産から消費までのライフサイクルでみたCO2排出量は40%程度少なくなる計算だ。

EORは石油業界ではよく知られた技術であり、米国では総延長6000キロメートル以上のCO2パイプラインを経由して年間70万トンものCO2を使って石油を生産。米国の原油の3~5%程度がこの技術によるといい、技術面の実績は十分だ。

発電所や製油所の排ガスからCO2を効率的に取り出せば、メキシコやインドネシア、ロシア、中東などの産油国で利用できる。現在の海運や航空で使っている燃料の62~375年分に相当する原油を低炭素化できると、国際エネルギー機関(IEA)は試算している。

完全な排出ゼロでないとの見方があるかもしれないし、海外での事業化が前提かもしれない。課題はあるものの、自然エネルギーを含めて資源に乏しい日本にとって使える手段のすべてを活用するのが合理的だ。低炭素化石燃料も選択肢に入れてはどうだろうか。

[日経産業新聞2019年7月5日付]

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