春秋

2019/7/3付
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どんなに嫌がらせを受けても、理不尽な仕打ちをされても、ただひたすら我慢、我慢、我慢……。けれど、とうとう堪忍袋の緒が切れた。桜吹雪の舞い散るなかを、粋な着流しの男一匹、ドスを片手に殴り込み――などというシーンをその昔、任侠(にんきょう)映画でしばしば見た。

▼「待ってました!」。客席から声をかける人が、実際にいたのである。留飲が下がったのである。さて、そういう展開にスカッとする日本人の胸に、いま、2つの出来事が響いているかもしれない。韓国に対する半導体材料の輸出規制強化や友好国指定取り消しと、国際捕鯨委員会(IWC)脱退を受けた商業捕鯨再開だ。

▼元徴用工をめぐる訴訟への韓国政府の態度にイライラが募り、慰安婦問題やレーダー照射の件も腹立たしい。もう我慢の限界というのがこんどの対抗措置のようだ。クジラのほうも、反捕鯨国が牛耳るIWCに長年つきあってはきたがもう限界。席を蹴って退場し、これからは日本の海で捕鯨を続けていくぞとあいなった。

▼ネットなどには「待ってました」のエールもあふれている。しかしその美学、ほんとうは相当に危なっかしいことだけは覚悟したほうがいい。先々を考えたほうがいい。任侠映画なら、観客はちょいと肩を怒らせて帰り、陶酔感に浸ればよかった。残念ながらこれはスクリーンではなく、面倒な国際社会のなかの話である。

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