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VCの成否は人間力

新風シリコンバレー 米NSVウルフ・キャピタルマネージングパートナー 校條浩氏

日本企業でコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)の立ち上げが増えている。CVCはベンチャー・キャピタル(VC)の一種であり、親企業の都合よりもシリコンバレーのベンチャーコミュニティーで認められるようでないと情報さえ入ってこない。そういう意味で、CVCはまずVCから基本を学ぶべきだ。しかし日本人によるシリコンバレーのVCで手本となるのは数社程度だ。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、ベンチャーキャピタル及びファンド・オブ・ファンズを組成。

トランスリンク・キャピタルはそのひとつ。大谷俊哉氏が韓国系と台湾系の米国人2人と2006年に立ち上げた。最初のファンドから5千万ドルを集め、最近の4号ファンドまでの累積投資額は6億ドル以上だ。トランスリンクは当初から良好な投資実績を示したので、次のファンドを組成するに従って規模を広げた。

大谷氏は三菱商事のシリコンバレー駐在員から米国の地元ベンチャー企業に転じて活躍。日本企業のCVCを経て、投資仲間だった他の2人と共同創業した。

DNXベンチャーズ(ドレイパー・ネクサスから社名変更)も急成長している。11年に5千万ドルのVCファンドを立ち上げた。その後、16年に1億7500万ドルの2号ファンドの組成に成功してから勢いは止まらず、最近運用を始めた3号ファンドの規模は3億ドルに迫る。

米国側の創業者は元JAIC America(日本アジア投資の米国法人)の北村充崇氏だ。ニューヨークの日本貿易振興機構(ジェトロ)で米国ベンチャー企業と日本企業との橋渡しなどをしていた。2000年にシリコンバレーに移り、JAICメンバーとして投資を始めた。

シリコンバレーでは全く無名のJAICであったので、北村氏個人の力で投資案件を発掘するしかなかった。その長い下積みの間に著名VCのティム・ドレーパー氏の知遇を得た。

日本人VCの成功に共通しているのは「シリコンバレーでVCを絶対に立ち上げる」といった強い意思と、長期にわたり資金調達と投資を続ける持続力だ。個々の人間力がシリコンバレーでは相互信頼を生み、人のネットワークができる。それが優良な投資案件につながるのだ。

日本のCVCで一番心配なのはこの点だ。大企業のロジックで人員を配置するような考え方では、CVCがシリコンバレーのコミュニティーで存在感を持つことは難しいだろう。逆説的だが、すぐにでも独立して自分のVCを立ち上げるような強烈な人間力のある人をCVCに据えることが成功につながるのだ。

日本企業のCVCでも強烈な人間力の社員が引っ張るようなところが出てきた。そのようなCVCに抜てきされた社員は、能動的に経営トップを動かそうとするくらいの気概がある。このような人物は今までの人事評価軸では収まらないから、経営トップが自らCVCに関わり、社員の「骨を拾ってやる」くらいの度量を持って対処している。

VCとCVCのどちらにおいても、このような先人に続き本物の成功例が次々と出ることを期待しよう。

[日経産業新聞2019年7月2日付]

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