他社訪問で考えること
SmartTimes WAmazing代表取締役社長CEO 加藤史子氏

2019/6/28付
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エストニアで日本人の視察団の評判が良くないという記事を先日、目にした。エストニアといえば人口130万人の小国ながらスカイプなどのグローバルユニコーンを4社も輩出し、行政サービスがほぼ完全に電子化されているIT(情報技術)先進国として注目度が上がっている。

慶応大卒、1998年リクルート入社。ネットの新規事業開発を担当した後「じゃらんリサーチセンター」に異動し、観光による地域活性化事業を展開。2016年WAmazing創業。

慶応大卒、1998年リクルート入社。ネットの新規事業開発を担当した後「じゃらんリサーチセンター」に異動し、観光による地域活性化事業を展開。2016年WAmazing創業。

そんなエストニアに視察目的の日本人が大挙して訪問しているのだろう。視察団を受け入れる現地のスタートアップ企業は当然、何らかのビジネス的発展を期待して受け入れ対応をすることになる。

しかし実際は、それが報われることは少ない。

物見遊山の気分で訪問してくる日本人ビジネスマンにプレゼンしても、その後の意見交換では視察者たちからほとんど発言も質問もなく、ディスカッションが成立しない。そして企業ロゴの前で記念写真を撮影するだけで満足そうに帰る視察団を見送った後は、日本側からのアクションが一切ない。そんな状況に疲れてきているらしい。

この現象は、かつてはシリコンバレーでも深センでも起きていた。見て、聞いて、習って、帰るだけ。これでは確かに、付き合わされるほうはつらい。

「時は金なり」を地で行っているスタートアップは特に「表敬訪問」や「挨拶」や「情報交換」の依頼を受けている時間はないのが実情だ。特に情報交換ではほとんどの場合、相手にとっての情報収集に終始し、交換にはならない。

スタートアップは銀行口座に残る預金を月々のバーンレート(赤字額)で割れば明確に自社の「余命」が算出できるというシビアな日々を生きている。余命は3~4年ということはない。長くても1年半だ。その限られた「生きている時間」に結果を出そうと、、みんな必死で仕事に向かっているのだ。

海外視察に限らず、日本国内でも挨拶や対面での説明を重視して、仕事をした気になっていないだろうか。対面訪問は、受ける側としても「1時間は確保しないと失礼にあたるのではないか」と気を回す。訪問する側は資料印刷などの準備と移動時間で前後2時間、会議時間で1時間と合計3時間を消費する。

3人で「ご挨拶」に伺えば計9時間なので、1日8時間労働以上のコストにあたるわけだ。

その「ご挨拶」や「表敬訪問」は本当に必要なのか。メールで資料を事前に送付し、電話での10分間の質疑応答に代替できないのか。こんなことを考えることも必要だ。

ビジネスはギブアンドテイクである。対等なパートナーシップを築くためには、相手の時間を不必要に奪わないこと。もし時間を使わせるのであれば、自分たちが何をギブできるのか考えて準備していく。

これらは国内外を問わず、他社を訪問する際の最低限のマナーだろう。

[日経産業新聞2019年6月28日付]

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