2019年8月20日(火)

春秋

2019/6/27付
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コミュニケーション能力――略してコミュ力。数年前から、若者たちのあいだでよく使われるようになった言葉である。キャンパスで、就活のさまざまな場面で、入社してからの上司との応対で、不可欠なのはコミュ力だという雰囲気は旧世代の想像以上に強いらしい。

▼相手に寄り添い、無用な摩擦を避け、それでいて自分の気持ちもきちんと伝える……などと専門家はコミュ力の強化を唱えてやまない。だから若い人たちは波風を立てぬことばかり意識し、保守化していくのではないか。近年の野党の著しい不人気の背景にも、コミュ力重視の風潮があると説くのは野口雅弘成蹊大教授だ。

▼「『こだわり』を持って抵抗したり、金切り声をあげて反対したりすることは忌避される」と野口氏はネットメディア「現代ビジネス」に書いている。「批判」や「対立」そのものに不快感を抱くという指摘だ。ひざを打ちたくなる話だが、だとすると、日本では香港みたいな光景は現れそうもないから複雑な気分になる。

▼どの野党も存在感を示せぬまま、通常国会が閉じて参院選が事実上スタートした。コミュ力の仮説を聞いて、もしや野党の面々が「そうだったのか! 弱いのは自分たちの責任じゃないんだ」と喜びはしないか、これまた複雑な気分である。あきらめずにほんとうのコミュ力を磨き、戸惑う世代の心をつかむしかあるまい。

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