アフリカで「前提」を疑う
SmartTimes サムライインキュベート代表取締役 榊原健太郎氏

2019/6/26付
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弊社は昨年5月に子会社を作り、アフリカに進出した。現在はルワンダやウガンダ、ケニアと南アフリカ共和国へ展開し、約10社に投資している。発展途上国は先進国とは「前提」が異なることが多いが、特に驚いたことが3つある。

74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

まず、多くの人が銀行口座を持っていないことだ。世界には銀行口座を持たない人が約17億人いるとされる。アフリカでは農業従事者が多く、彼らは銀行からお金を借りられずクレジットカードも作れない。村で定期的に会合を開いて共通の貯金箱のようなものにお金をため、共同でバイクや工作器具を買ったり、お金を借りたりしている。

次に多くの人が住所を持っていないことだ。だから自分の居所を証明するものがなく、道に名前が付いている程度。だが、実は世界では40億人の住所がないともいわれている。3番目が約7割の人がテレビを所有していないこと。物流網がなく、テレビが高額になってしまうのが原因だ。

そんなアフリカにイノベーションを起こす起爆剤となっているのが、5種類ほどアプリが入るスマートフォンだ。このスマホで、フィンテック分野で大きなイノベーションが起きている。エム・ペサというモバイルマネーサービスが普及し、現金をチャージして送金や決済に使うことが普通になっている。銀行口座がなくても電子決済が可能になり、新しい決済プラットフォームができつつある。

3つの「前提」は、どう変革されているか。まず、みんなでためている貯金箱がスマホの電子ウォレットに置き換わっている。これで信用度を計測し、銀行から融資をつなぐスタートアップが生まれている。

住所を持たないことについては、ケニアに革新的な事例がある。スマホの全地球測位システム(GPS)情報でバーチャルアドレスが発行され、スマホの所有場所や近くの郵便局に物を届けるスタートアップが事業を拡大している。

これまでは現地の郵便局に取りに行っていたが、各国の郵便局との提携で大きく変わる。日本でも物流のラストワンマイルが問題になっているが、これは大きなリバースイノベーションになると確信している。

そしてテレビを所有しない代わりにスマホが活躍する。ケニアではスマホ利用者の44%がSNSを利用しているそうだ。教科書が高いためにユーチューブで本を検索し、動画や音声だけで学ぶ学生も多い。

アフリカは2050年には人口が25億人になるともいわれている有望な大陸だ。私も以前から「前提を疑うことこそがイノベーションの源泉」と考えていたが、アフリカにはここまで違う世界がある。皆さんは、いま見えている前提をなくして物事を考えられるだろうか。本物のイノベーションを起こしたい人は、一度アフリカの現状を見に行くことをお勧めしたい。

[日経産業新聞2019年6月26日付]

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