変化し続けるオフィス
新風シリコンバレー WiLパートナー 小松原威氏

2019/6/25付
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今では巨大企業の米アップルも米グーグルも、はじまりは創業者の自宅ガレージ(車庫)だったのは有名な話だ。米ヒューレット・パッカードの創業の地であるガレージは「シリコンバレー発祥の地」として観光名所になるほどだ。シリコンバレーでは多くのベンチャー企業がガレージで創業され、規模が大きくなってもオフィスにガレージっぽさを残すことが多い。

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labsに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labsに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

これは従業員のコミュニケーションを闊達にし、創造性を発揮させるための重要なファクターだからだ。一見、カラフルな家具などが並び、全体的にごちゃごちゃした配置になっているのも全てこのためである。

ガレージのようにコンクリートにひびが入った汚い床や、配管がむき出しの天井にも意味がある。それは「不完全」であること。人は完成されたモノに囲まれると満足しやすい。常に不完全なモノに囲まれることによって、何とか良くしようと創造力が発揮されやすいという。

テーブルも高くハイチェアであることが多い。壁一面が落書きだらけのホワイトボードになっていることも多い。ハイチェアによって、すぐ立ち上がってホワイトボードに何か書き込んでコミュニケーションを促すための工夫だ。

一昔前のシリコンバレーのオフィスは、どれだけ大きな個室が与えられるかがステータスだったが、今は大部屋スタイルが多い。日本は管理目的で上司が窓側に座る島型になることが多いが、シリコンバレーではごちゃ混ぜなので、上司がどこに座っているのか探すのも一苦労だ。

どの家具にも車輪がついているのは、常にレイアウトを変え続けるためであるように、オフィスというのは引き渡しされた瞬間が完成された状態ではなく、常に不完全な状態で変化し続けることで、従業員の創造力を刺激する。

「永遠の未完成」がテーマの米フェイスブックの本社も創造性あふれるオフィスデザインで有名だが、壁の少ない全長数百メートルのオフィスは圧巻だ。日本でもヤフーが導入して有名になった上司と部下の1on1ミーティング。フェイスブックでは、会議室で1on1をするのではなく、この数百メートルの廊下を2人で歩きながら話すという。

私もシリコンバレーでは屋内ではなく、オフィス周辺の屋外を歩きながら1on1をすることが多かった。こういった工夫もコミュニケーションでは大切だ。

日本でもこういった創造性あふれるオフィスが増えてきたのは喜ばしいことだが、一点だけ「きれいすぎる」ことが残念だ。壁一面のホワイトボードは落書きだらけで付箋紙が貼り付けられ、出来損ないの試作品が落ちていてもいいのだ。きれいすぎるオフィスでは、汚してはいけない失敗してはいけないと逆に使う人が減ってしまうだろう。

もし、そういった場をつくるのであれば「整理整頓」をNGワードにすることをおすすめする。オフィス空間は、企業や従業員と共に、成長し常に変化し続ける必要がある。

[日経産業新聞2019年6月25日付]

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