温暖化ガス排出削減に圧力 企業、迫られる「1.5度」対策
Earth新潮流 日経ESG編集部 馬場未希

2019/6/21付
保存
共有
印刷
その他

「『1.5度』に貢献する温暖化対策を求められるようになったが、あまりに急だ。事業部にこれ以上の対策強化をどう説明すればいいのか」。ある企業の環境担当者はこう嘆く。

温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、世界の平均気温の上昇について産業革命前より「セ氏2度を十分に下回るか1.5度に向かう努力の追求」を求めている。ここに来て企業の悩みの種となっているのが「SBT(科学と整合する温暖化ガス削減目標)」だ。

SBTは企業が自主的に定める削減目標。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」などがまとめた科学的知見に基づき、中長期で大幅に温暖化ガスを減らす。国連機関や非政府組織(NGO)などによる「SBTイニシアチブ」が企業の目標を検証。将来の気温抑制目標に合うと判断すれば、認定を与える。

イニシアチブに参加するCDPジャパンの高瀬香絵シニアマネージャーは「世界では1.5度に向け最大限取り組むべきだとの意欲が強まっている」と話す。

これまでに世界215社が自主的にSBT認定を受けた。さらに339社がSBTの設定を約束している。企業はSBTの設定を政府などから義務付けられてはいないが、気候変動対策への意欲をアピールできることから活用が進んだ。

ところが企業は一層の対策強化を迫られようとしている。SBTイニシアチブが、10月から目標の引き上げを求めると発表した。

これまでSBTはパリ協定よりやや緩く、気温上昇を2度程度に抑える目標として毎年、基準年比で1.23%以上の削減を求めていた。10月からは「2度を十分に下回る目標」として同2.5%以上、「1.5度目標」として同4.2%以上の削減を求める。

9月から企業の目標のレベルもウェブサイトで公開される。1.5度に見合う水準の目標か、2度を十分に下回る水準かなどが誰の目にも一目瞭然となる。

みずほ情報総研の森史也コンサルタントは「SBT認定を受けない企業でも、SBTの観点で機関投資家やESG評価機関などから目標の水準を評価される。削減目標の度合いで企業が選別される可能性がある」と話す。

また、イニシアチブは金融機関が対象の認定制度を始める計画で、投融資先に対しSBTに相当する目標設定を求めるエンゲージメントを推奨する見通しという。新基準に見合う目標を設定できるかどうかは、グローバル企業の評価を左右するリスクになりそうだ。

[日経産業新聞2019年6月21日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]