外国人誘致、最後の好機
新風シリコンバレー WiL共同創業者兼CEO 伊佐山元氏

コラム(ビジネス)
2019/6/18付
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優秀な外国人が採用できない――。いま、シリコンバレーの至る所で起きている現象である。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

我々の周りでも、就労ビザが獲得できずに泣く泣く本国に帰国する人、ビザの延長を却下されて途方にくれる人、ビザが必要というだけで採用を見送られる人など、胃の痛くなる話が増えている。一連のトランプ政権による、外国人締め出しは確実にシリコンバレーのベンチャー業界に影響を及ぼしている。

しかも人の採用だけではない。2018年から始まったCFIUS(シフィウス=対米外国投資委員会)のパイロットプログラムにより、海外の投資家の米国への投資規制が極めて厳しくなっている。

例えば、外国企業による米国のハイテクベンチャー投資の多くは審査の対象になり、投資対象が先端基盤技術を保有するとみなされると最悪の場合、投資が破棄されることもある。今はやりのAI(人工知能)、ML(機械学習)などは対象になる。

技術系ベンチャーへの外国人の投資は国防にかかわる、という理屈だ。このルールにより、米国籍の投資家でないと、自由に投資すらできないという状況になっている。我々含め、多くの日本企業が頭を悩ませている。

他方、米国の昨今の経済成長には、移民の力が大きいことはよく話題にあがる。いわゆるユニコーン(時価総額が10億ドルを超えるベンチャー)企業の創業メンバーのうち、半数以上は移民だ。

最近上場した、ライドシェアのウーバーも、ビデオ会議システム最大手のズームも創業者は移民である。また、ベンチャーを支援する投資家であるベンチャーキャピタルの多くも、海外出身者が多い。

大手のハイテク企業も、勤勉で高度なスキルを持つ外国人が活躍することで、グローバルな競争で先頭を走り続けている。実際に、マイクロソフト、グーグル、テスラといった米国を代表する企業のCEO(最高経営責任者)も海外からの移民である。

このような好機に、日本こそは積極的に海外のベンチャー起業家をもっと受け入れるべきではないだろうか。スタートアップビザなど制度面では門戸を開いているつもりでも、まだまだ日本は外国人にとっては移住することが難しい国らしい。

外国人が家族で生活しやすい環境はあるのか。すぐに銀行口座を開き、家を借りることができ、オフィスを登記できるような環境になっているのか。投資家は英語でコミュニケーションを図ってくれるのか。市場は外国人ベンチャーに開かれているのか。まだまだ十分な状況とは言い難い。

20年の東京オリンピック・パラリンピックを含め、何かと日本は注目される環境にある。このチャンスをいかせなければ、恐らく日本で優秀な外国人ベンチャー起業家を誘致することは不可能であろう。われわれも最後の機会と思い、日本の魅力を伝え、一人でも多くの優秀なベンチャーを連れてきたい。

[日経産業新聞2019年6月18日付]

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