2019年9月20日(金)

辞める新人と崩れる終身雇用 HRテックで上司に思いを
先読みウェブワールド (野呂エイシロウ氏)

2019/6/17付
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NIKKEI MJ

若手社員もパソコンなら本心を伝えやすい

若手社員もパソコンなら本心を伝えやすい

5月、日本中に衝撃が走った。トヨタ自動車の豊田章男社長が記者会見で「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言。経団連の中西宏明会長も「就職した時点と同じ事業が続くとは考えにくい」と述べた。終身雇用の終わりではないかと議論がまき起こっている。

世の中では今春も約40万人の大卒が入社した。厚生労働省によると、大卒の1年未満の離職率は11.5%に上る。しかも大型連休明けのこの時期に辞める人が多いという。休みに学生時代の友人と会い、「違うかも」「うちの会社、今一歩」などと感じて退社するという話を聞いた。

そんな中、会計士や税理士など士業を支援するアックスコンサルティング(東京・渋谷)が、ミスマッチをなくそうと人材育成支援サービス「ジャングル」を発表した。「支援のなかで人材が課題だと見えてきた。これからの採用は『採る』から『生かす』へ転換すべきだ」と広瀬元義社長は話す。

「ジャングル」のイメージ

「ジャングル」のイメージ

新入社員に定期的にアンケートが届き、思っていることや不満を分析する。社員一人ひとりをフォローし、早期退職を防ぐ。自社でもサービスを使い、今年は一人も辞めていないという。若い社員のなかには不満やストレスが表に出ない人もいる。「配属後の目が届きにくい状況でも、システムにコメントを残すので早めにサポートできる」と広瀬氏は自信を見せる。

会社単位の導入で、初期費用が30万円(税別)、月額1人当たり500円(同)かかる。研修コストと比べると安価と言えそうだ。

筆者は「会社が合わないんだったら辞めれば」と思うが、広瀬氏は「離職の理由には人間関係もある。会社になじむためのサポート、『オンボーディング』での対策が解決策の1つとなる」と話す。

のろ・えいしろう 愛知工大工卒。学生時代から企業PRに携わり、出版社を経て日本テレビの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で放送作家デビュー。戦略PRコンサルタントとしても著作多数。愛知県出身。

のろ・えいしろう 愛知工大工卒。学生時代から企業PRに携わり、出版社を経て日本テレビの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で放送作家デビュー。戦略PRコンサルタントとしても著作多数。愛知県出身。

オンボーディングとは船や飛行機に乗る状態のこと。単なる乗客ではなく乗組員になる。新入社員はお客さんではなく、自らの意志で役割を担うことを、まず最初の3カ月でしっかりと教える。一生懸命働いたのに評価されないことをなくしたいのだという。

システムの内容は、研修動画の閲覧や目標管理、上司との短期スパンでの1対1面談など盛りだくさん。その情報をつかって、上司は新入社員を辞めさせないばかりではなく、さらにパワーアップさせようというのだ。

アックスでは人事評価にも力を入れたいという。人事とテクノロジーを掛け合わせたHRテックは世界で急成長しており、開発競争が激しい。終身雇用の終わりや働き方改革が叫ばれる現在、一方的に評価されるのではなく新入社員のうちから自分を上層部に届けることが必須なのかもしれない。

[日経MJ2019年6月17日付]

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