顧客のためになる融資は
SmartTimes 三井住友銀行 成長事業開発部長 北澤裕司氏

2019/6/12付
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東京都大田区蒲田の支店が舞台のテレビドラマ「集団左遷!!」で、融資を題材とした内容は興味深かった。案件検討で副支店長が言った「支店長、それはお客様のために本当になるのでしょうか、無駄な借金を背負わせることになるんじゃないですか」という言葉には考えさせられた。

1989年住友銀行(現三井住友銀行)入行。ベンチャーエンタープライズセンター主任研究員を務めるなどベンチャー支援に従事。SMBCコンサルティング企画部長などを経て、17年より現職。

1989年住友銀行(現三井住友銀行)入行。ベンチャーエンタープライズセンター主任研究員を務めるなどベンチャー支援に従事。SMBCコンサルティング企画部長などを経て、17年より現職。

ベンチャー企業に対する銀行融資は簡単ではないといわれる。かつては不動産に代表される担保や代表者の保証の有無、また相応期間の黒字を計上している事業実績などが審査の主要な視点とされてきた。昨今は担保や保有資産にとらわれずに取引先の事業の成長性をしっかりと理解し、調査分析を踏まえてベンチャー企業への融資に取り組む銀行も増えている。しかしスタートアップ時点、いわゆる事業を一から立ち上げる際や研究開発投資に多くの資金が必要となる段階など、高いリスクを伴う事業ステージでは「融資」ではなく「投資」による資金調達がふさわしい。

リスクマネーを供給するとともに経営ノウハウなどを補完し、成長をサポートする機能はベンチャーキャピタルが担う。日本ベンチャーキャピタル協会の会員企業は130社を超え、投資による資金供給の仕組みは整ってきた。彼らはリスクをとってスタートアップへの資金供給に挑んでいる。ベンチャーエンタープライズセンターによると2018年の国内向け投資は1361億円と、5年前の2倍以上になっている。

一方、スタートアップやエクスパンションと呼ぶリスクの高い事業ステージをクリアし、安定した成長が見えてくれば「融資」による資金調達が望ましい。

売り上げ増に伴う運転資金などの資金調達は将来的に高コストとなる投資よりも融資を使ったほうが合理的だ。もっとも、人的リソースも含めた総合的な経営実績が乏しいベンチャー企業は、この段階でも相応の事業リスクを抱えている。こうしたステージでは、事業成長に伴う様々なリスクを理解し、オーダーメードの融資を提供できる銀行の機能が求められる。

最近では様々な銀行が将来の有力な取引先候補であるベンチャー企業に接近し、テレビドラマに描かれた支店長や中堅・若手行員などがベンチャー企業の開拓に汗を流している。

こうした行員から融資の提案があった時、財務担当者や最高財務責任者(CFO)に任せきりで「借りられるなら借りよう」と安易に考えるのは危険だ。

提案した行員が事業の成長性やリスクを細かく理解しているか。資金をどのように使っていくか。返済の原資は何か。事業が予定通り進まなかったとき、返済方法や期限をどう考えるのか。経営者がひざ詰めで議論をすることが重要だ。ドラマの副支店長のように「本当にお客様のためになる融資」を考え、伴走する銀行員を見つけてほしい。

[日経産業新聞2019年6月12日付]

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