2019年9月16日(月)

技術革新、2050年への道筋 カギは分散投資と人材
Earth新潮流 三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚氏

2019/6/7付
保存
共有
印刷
その他

温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を踏まえ、2050年までに世界の温暖化ガス排出量を半減させるための各国の目標や、具体的戦略の議論が活発だ。

ドイツは50年までに実質半減を打ち出し、日本も「50年に80%削減」と「21世紀後半のできるだけ早い時期の実質排出ゼロ」に向けて動き出す。この厳しい目標達成に欠かせないのが技術のイノベーションだ。

政府は長期戦略で、次世代太陽光発電や二酸化炭素(CO2)地下貯留(CCS)、水素分野などイノベーションが期待される有力技術をリストアップした。このような技術の特定は企業や研究機関への明確なメッセージとなるだろう。

次は具体的な戦術だ。網羅的になってはいるが、ボトルネックだった要素技術の改良で急速に進展する隠れた技術がないとは言えない。30年前に現在のスマートフォン(スマホ)の性能や使い方を予測した人はどれほどいただろうか。蛍光灯から発光ダイオード(LED)へのシフトのように、有力な代替技術が想定より早く普及し、優れた技術が急速に陳腐化した例もある。

リサイクルの進展、人口やライフスタイルの変化、デジタル化により、エネルギーや資源の需要が変われば必要とされる技術も変わる。様々な面で不確実性があり、専門家でも長期的にみて最適なリストを作成するのは簡単ではない。

限られた経営資源の中で効率的に技術開発を行うためには「選択と集中」が有効だ。しかし技術を絞り込むことによるリスクもある。例えば、水素が想定通りのコストで供給されないと水素社会も実現しない。

そこで、代替技術がすぐに出てくるような仕組みが必要となる。目標を明確にした上で「分散投資」によって様々な技術や代替エネルギーに機会を与え競争環境を整えるという視点があっていいのではないか。

研究開発のための人材確保も忘れてはならない。技術開発には時間がかかる。例えば、化石燃料を使いながらCO2排出量を実質的に減らせるCCSが本格的に普及するのは、30年以降と想定される。これはCO2の回収などで基礎技術の改良が必要だからであり、大学や研究機関の役割が大きい。

しかし、日本の予算制度では事業計画は長くて5年。5年先の雇用が見えないようでは、技術者は安心して研究もできない。多様な研究人材が次々と参入することでイノベーションも進むだろう。予算制度の手直しも必要かもしれない。

[日経産業新聞2019年6月7日付]

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。