2019年7月17日(水)

ポケモンに学ぶ事業の広げ方 ブランド、収益より重視
奔流eビジネス (アジャイルメディア・ネットワーク取締役 徳力基彦氏)

コラム(ビジネス)
ネット・IT
2019/6/7付
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NIKKEI MJ

ここ数年、ポケモンの事業領域の広がり方がすごいのをご存じだろうか。位置情報を活用したスマートフォンゲーム「ポケモンGO」が2016年に登場し、日本はもちろん世界中を席巻した。先週には睡眠をコンセプトにした「ポケモンスリープ」を発表し話題を呼んでいる。

ポケモンの「サンド」が砂丘とからめて鳥取県とコラボ

ポケモンの「サンド」が砂丘とからめて鳥取県とコラボ

今年は映画「名探偵ピカチュウ」でハリウッド実写化も実現した。オープニングの興行収入がビデオゲーム原作では最高を更新。ハリウッド実写化はドラゴンボールなど物議を醸すケースもあっただけに、多くの人の予想を良い意味で裏切る成功となった。

ポケモンの事業展開は何にでも手を出しているように見えるかもしれない。だが実は違うようだ。

沖縄で5月に開かれた「マーケティングアジェンダ」でゲーム企画のポケモン(東京・港)の宇都宮崇人・最高執行責任者(COO)の講演を聴いた。事業領域を説明する際に使っていたのが、収益性の高低とブランドに好影響を及ぼすか否かの2つの軸だ。

来年には「睡眠」をテーマにしたスマホゲームを配信する(5月)

来年には「睡眠」をテーマにしたスマホゲームを配信する(5月)

原点であるゲーム関連は当然、収益が上がるし、ブランドへの影響も良い。面白いのは「収益性は低いがブランドに好影響を与える事業」にも積極的に取り組む点だ。

例えば、ポケモンGOをきっかけに地方自治体とのコラボ企画が増えている。自治体には利用権を無料で提供している。ポケモンGOで協業した米ナイアンティックの社会貢献精神やくまモンの成功事例を参考にして、無料だからこそ面白い商品が生まれ、ひいてはブランドの広がりにつながると考えるからだ。

さらに興味深いのは、「収益性は高いがブランドに悪影響を与える事業」には手を出さないと決めている点だ。海外進出を試みた際に現地パートナーに販売を任せ、安売りでブランド価値が下がる経験をした反省があるという。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

実写化でもハリウッドのチームとポケモンの細かいデザインをしっかりと議論をした。だからこそ既存ファンにも受け入れられたのだろう。

イベントには世界最強のマーケターとも呼ばれる元P&Gのジム・ステンゲル氏も登壇した。ブランドの存在意義とも呼ぶべき「ブランドパーパス」を見つめ直し、軸にしたマーケティングの重要性を説いていた。

株式会社ポケモンには「ポケモンという存在を通して、現実世界と仮想世界の両方を豊かにする」というブランドの軸があり、離れた事業には手を出さない。お手本の1つと言えるだろう。宇都宮氏は上場企業だったら「収益性は高いがブランドに悪影響を与える事業」の誘惑が大きいかもしれないと話していた。

上場企業が業績目標を達成するため、ブランドイメージを壊すような広告手法を使ったり不正に手を出したりするケースは日本でも増えている印象がある。収益とブランドのバランスをどう取るべきか、ポケモンから学ぶことはいろいろありそうだ。

[日経MJ2019年6月7日付]

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