代替肉が映す未来 食の変化、省エネが迫る
Earth新潮流 日本総合研究所理事 足達英一郎氏

2019/5/31付
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2日、米ニューヨークのナスダック市場に一つの会社が新規上場を果たした。社名は「ビヨンド・ミート」。2009年にカリフォルニア州で設立され、主原料に植物だけを使用して「本物の肉と全く同じ味の食品」を供給する企業だ。

上場から3週間余りが過ぎ、株価は公開価格の約3倍。19年の最も優れた公開事例の一つとなるのは確実だと市場関係者は語る。

主力製品はハンバーガー用パテやソーセージで、北米と英国で3万3千のスーパーマーケットやファストフードチェーンに製品を提供している。18年6月にはミズーリ州で2カ所目となる工場を稼働し、生産規模は3倍増強された。18年の年間売上高は前年比で170%の伸びを誇る。

それでも年間売上高は8790万ドル(約96億円)。まだまだ小粒の企業がこれだけ注目される背景に、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が大株主であること以上に、代替肉市場の成長期待がある。最新の予測では向こう10年で世界市場は1400億ドル規模となり、食肉市場全体の約1割を占めるとみられている。

市場拡大の要因として消費者の健康志向の高まりがあるが、もうひとつ見逃せないのは、従来の畜産業が抱える環境・エネルギー面での負荷の大きさだ。

18年9月にミシガン大が公表した、ビヨンド・ミートと従来のアメリカンビーフを比較したライフ・サイクル・アセスメントの結果は興味深い。ビヨンド・ミートのバーガーは従来ビーフのものに比べて、エネルギー消費で46%、温暖化ガス排出で90%、土地利用では93%、水資源に至っては99%の削減効果があると報告されている。

これまでも同じカロリーやたんぱく質の消費を考えた場合に、動物由来の食品が植物由来の食品に対して、大きな環境・エネルギー負荷を持つことは指摘されてきた。飼料効率が1にはならないことを考えれば当然で、さらに畜産経営ではメタンと亜酸化窒素の排出が不可避なのが理由だ。

プリンストン大学のサーチンガー客員研究員らのグループは、牛を代表とする反すう動物の食肉消費が10~50年の間に88%も増加することに警鐘を鳴らし、世界人口の約20%を占める肉食依存の消費者が50年までに平均消費量を4割減らすべきだと提唱している。

発電分野で石炭火力から再生可能エネルギーへの移行が頻繁に話題となるなか、畜産と農業の分野でも「持続可能な未来」に向けた大きな変化が芽生え始めている。

[日経産業新聞2019年5月31日付]

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