春秋

2019/5/27付
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プロレスの極意は目の前の敵との闘いっぷりよりむしろ、いかに観客を沸かせるかにある。自分のキャラを立たせ、因縁試合など分かりやすい物語を提示してみせる。そのためなら相手をののしったり、客席の人たちをあおったりすることだって、ためらう必要はない。

▼本国でプロレス団体の殿堂入りも果たし、その政治手法をまさにプロレス的と評されるトランプ大統領である。来日2日目に訪れた両国国技館で目にしたスモウレスラーたちの所作に何を思ったであろうか。ぶつかり合う迫力はともかく、マイクアピールどころかガッツポーズもない光景は、物足りなかったかもしれない。

▼超VIP夫妻の登場に館内は大いに沸いた。升席にイスを持ち込むなんて無粋な。そんな好角家らの声も聞かれたものの、多くの人が拍手を送り、スマートフォンをかざして迎えた。結びの一番までの取組5番の観戦から、大統領杯を優勝力士の朝乃山に手渡すまで1時間ほど。時折笑顔を見せ、終始穏やかな表情だった。

▼国技館では、プロレスでいうベビーフェース(善玉)で通したトランプさんだがこの先、日本との貿易交渉が本格化することになる。来年の大統領選に向けて熱狂してもらいたい観客は米国にいる自らの支持者たちであろう。いずれ日本にとって、最強のヒール(悪玉)と化すのかもしれない。やっかいな話になりそうだ。

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