2019年6月20日(木)

春秋

春秋
2019/5/24付
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映画「キングダム」を見た。10年以上も続く連載漫画が原作で、後に中国の古代帝国、秦の始皇帝となる「政」と、やはり大将軍となる「信」の若き激動の日々を描く。時に感情をほとばしらせる俳優らの演技と、次から次に現れる武術の達人との対決は見応え十分だ。

▼この映画を機に中国史に関心を持つ向きも多いだろう。紀元前221年、秦はなぜ、あの広大な地を史上初めて統一できたのか。ストーリーが先まで進んだ原作を引用しつつ、そのなぞを解き明かし、ひいては現代の中国共産党による統治の手法に迫る本も出版された。渡辺義浩さんの「始皇帝 中華統一の思想」である。

▼秘密を解くカギが「法家」の考え方による改革という。血縁や氏族を重んじた古い制度と異なり、秦は法の支配を徹底した。次男以降は分家を強いられ、住民は相互監視し、戦場では身分を問わず信賞必罰。地方へは一代限りで官僚を送り、実質は皇帝が支配する。民を分断し、君主に直接、忠誠を誓う仕組み作りらしい。

▼法家の思想は歴代王朝を支え続けた、というのが渡辺さんの見方だ。むろん現代も。億単位の監視カメラや個人の信用度の点数化など「法家の理想に対して、現実のテクノロジーが2200年後にようやく追いついてきた、ともいえる」。過熱する貿易戦争でも歴史が培った老練な策がひそかに練られているかもしれない。

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