ベンチャー投資家の資質
SmartTimes グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 高宮慎一氏

2019/5/24付
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ベンチャーキャピタル(VC)は起業家の伴走者として資金だけでなく事業面で投資先を支援しつつ、資金運用受託者として投資家にリターンを返さなくてはならない。さらにはパートナー(独り立ちしたキャピタリストで経営メンバー)になるとベンチャーキャピタル会社の経営も担うので、二足どころか三足のわらじをはくこととなる。投資実務の知見や投資先のスタートアップを支援する経営や事業の知見、資産運用の知見が求められる。

テクノロジー分野のスタートアップに数多く投資し、社外役員として経営を支援。支援先には、アイスタイルやナナピ、メルカリなどがある。東京大学経済学部、ハーバード大学MBA卒。

テクノロジー分野のスタートアップに数多く投資し、社外役員として経営を支援。支援先には、アイスタイルやナナピ、メルカリなどがある。東京大学経済学部、ハーバード大学MBA卒。

どのようなキャリアを経てVCになるのか。そんなに多くの知見を兼ね備えた人などいるのか、という疑問がわいてくるだろう。

VC産業が50年の歴史を誇るシリコンバレーでは、VCのパートナーの多くは多様な事業や起業で経営経験を積んでVCになっていることが多い。セコイアのジム・ゲッツはAT&Tなどの事業会社を経てVitalSignsを創業し、売却後にVCになっている。ベンチマークのビル・ガーリーはコンパックといった事業会社とクレディスイスなどでの株式アナリストを経てVCになった。

一方で日本では、経営経験を積んでからVCになる人は少ない。経営のプロはまだ多くないし、シリアルアントレプレナー(連続起業家)もVCに転身する例は限られている。

そんな中でVCにはコンサルティング会社や事業会社の事業開発部門、証券会社や投資銀行といった金融など、若くしてスタートアップコミュニティーのインサイダー化している人が就くケースが多い。

米国では入り口で多様な知見を兼ね備えていることが求められているのに対し、日本は大きく門戸が開かれている。日本では多様な知見を身に付けるポテンシャルがあり、何らかの専門性が一つあれば良い。

筆者自身もVCになった当初は経営コンサルティングの経験から経営全般の知識はある程度あったが、スタートアップ特有の経営の知見や起業家とのネットワーク、投資業務や資産運用の知見はほぼなかった。

そして10年以上を経た今、VCに必要なのはスキルや知識よりも世界を変えたいという情熱、成長意欲や好奇心、起業家や投資家といった仲間と何かを達成したいという「人好き」の資質だと思っている。

VCの仕事は自己実現の報酬が大きく、非常にやりがいのある仕事だと考えている。世の中の課題を解決して世界を変えるという大きな挑戦に、思いを共有する仲間と同じ船に乗って挑むことができる。

スタートアップや起業家の成長を支援したい、新たな産業を生み出したいという思いを持った人にとっては、またとないチャンスがある。VCの門をたたいてVC業界やスタートアップ業界を盛り上げ、日本に新たな産業を生み出していきたいという仲間が増えることを願っている。

[日経産業新聞2019年5月24日付]

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