2019年6月26日(水)

春秋

2019/5/22付
保存
共有
印刷
その他

「バルブの閉め忘れで大きな音を出し、ご迷惑をおかけしました」「硫黄の臭いがするとの問い合わせをいただき、速やかにパトロールして発生源でないことをご報告しました」。花王の和歌山工場は昨夏から、こんなお知らせを載せた住民向け広報紙を発行している。

▼地域の不安を除くためだ。工場は化学物質を扱う。高圧ガスもある。事故を心配する声があるのも無理はない。そこで防災や環境保全の取り組みとあわせ、工場で起きたことを半年に一度、A3判の紙の表裏にまとめて約千世帯に配ることにした。名前は「かけはし」。「工場をブラックボックスにしない」と幹部はいう。

▼和歌山工場には痛恨の過去がある。1944年(昭和19年)の事故だ。陸軍の強引な指示が発端だったが、航空機用の潤滑油設備が試運転で爆発して13人の死者が出た。いまも敷地内の神社は殉職者をまつる。爆発が起こった12月26日を「安全防災の日」と定めていることや事故防止への決意を、かけはし第2号は記した。

▼3月期決算企業が株主総会の準備を急ぎ始める時期だ。活発な株主とのやり取りを願うが、会社が存続していくためには地域の人たちとの対話もはずせない。和歌山工場には広報紙の読者から、「小学生も興味を持てる、かみ砕いた内容にしては」といった声が届く。企業から率先して住民に働きかける。対話の第一歩だ。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報