2019年6月17日(月)

人間への視点 課題の糸口
SmartTimes PwCコンサルティングパートナー 野口功一氏

コラム(ビジネス)
2019/5/20付
保存
共有
印刷
その他

先日、シリコンバレーで有名なある研究所の所長と話をした。シリコンバレーや研究所と聞くと、技術やソフトウエアで実現されるSFのような世界を想像されるかもしれない。人間を代替する技術や、人間が持っていない力を開発しているイメージだろう。

イノベーションを生み出すための仕組み(プラットフォーム)づくりに従事。海外のスタートアップや大学、NPOとも連携してイノベーションの創出を戦略策定から支援している。

イノベーションを生み出すための仕組み(プラットフォーム)づくりに従事。海外のスタートアップや大学、NPOとも連携してイノベーションの創出を戦略策定から支援している。

しかし、その研究所が大事にしているのは「人間に視点を合わせる」ことだ。彼らは人間の力を最大限に発揮させるものを作ろうとしており、デジタル全盛の世の中だからこそ人間を大事しようとうたっている。シリコンバレーで人間の視点が大事にされているとは、あまり知られていないのではないだろうか。

日本でも知られるようになった「デザインシンキング」は、シリコンバレーでは以前から盛んに使われている。これもテクノロジー主眼の手法と思われがちだが、実は人間の視点をより大事にしようということから始まっている。従来の「ものづくりの視点」では人間の本当のニーズは満たせない。機能やコストなどで満足される商品を作れば売れた時代は終わり「使う人の共感」が重要となっている。それには人間を観察して何が本当の課題かを把握し、新しい価値を生み出す議論をする必要がある。

シリコンバレーの最近の若いイノベーターは最先端のテクノロジーを活用しつつ、人間性や哲学など、よりアナログな要素も取り入れている。日本でも社会課題の解決をミッションにあげる企業が増えてきたが、最近成功している起業家の共通点として挙げられるのが「世界をよくする」というモチベーションだ。

成功への欲望やお金に対する思い以前に倫理的、人道的な視点に立って起業する人物が増えている。彼らは社会インフラや貧困、教育など様々な課題をきっかけに起業する。従来これらは社会貢献活動であって利益を出すものではないと思われていたが、ビジネスとして成り立たせている。

もちろん気持ちだけで問題を解決し、利益を上げるのは難しい。そんなパッションとともに、自分とは異なる多様な価値観を受け入れること、失敗を恐れないこと、型にはまらない発想など「枠を越えること」が重要となってくる。枠を越えることは人間が人間のこと、社会のことを考えることで生まれてくる。

テクノロジーは人間性や創造力を高めていく可能性を秘めており、世の中の様々な社会課題を解決する力も持っている。

いま世界のスタートアップ企業がテクノロジーのポテンシャルを社会で必要とされることに活用しようとしている。多くのハードルはあるだろう。そんな考えを支援するエコシステムの有無や幼少期からの教育など、本質的な課題もあるだろう。しかしテクノロジーが様々な分野でドライブする社会だからこそ、より一層、人間性を重視し、見つめることが重要なのだ。

[日経産業新聞2019年5月20日付]

「日経産業新聞」をお手元のデバイスで!

 スタートアップに関する連載や、業種別の最新動向をまとめ読みできる「日経産業新聞」が、PC・スマホ・タブレット全てのデバイスから閲覧できるようになりました。申し込み月無料でご利用いただけます。

 
保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報