2019年5月24日(金)

春秋

春秋
2019/5/16付
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反戦フォークの名曲「戦争を知らない子供たち」がヒットしたとき、世に賛否が渦巻いた。戦後生まれの若者がやさしく平和を訴える内容に、旧世代は「甘さ」を感じたのである。こういう歌で戦争を語れるか、戦争はもっと苛烈なものだという思いがあったのだろう。

▼曲が生まれたのは1970年。戦後まだ25年である。過ちを身にしみて知る人々がたくさんいた。かたや、ギターを奏でる若者たちとて戦場の悲惨、空襲の恐怖を聞いて育った。戦争への怒り自体は社会が共有しているなかで、この歌は議論を呼んだに違いない。さて、それからまた半世紀――。景色の変容がすさまじい。

▼日本維新の会の丸山穂高衆院議員が、北方四島ビザなし交流で国後島を訪れたさいに元島民らに問い詰めた。「戦争で島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」「戦争しないとどうしようもなくないですか」。酔っていたらしいが言い訳にはならぬ。当年とって35歳。この「戦争を知らないお子さま」に戦慄さえ覚える。

▼東大経済学部卒、経産省へ。松下政経塾でも学んだ人である。そんなエリートの倒錯が痛ましく、反戦歌を歌いつつ戦争を風化させた歳月が悔しい。丸山さんは維新を除名された。議員辞職を求める声も強いが、辞めないという。ならば妄言を記憶にとどめるための反面教師として、みなが目を凝らし続けるほかあるまい。

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