春秋

2019/4/30付
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風薫る新緑の季節だ。が、大みそかを迎えたような心持ちである。新年を待つように、人々は心穏やかに平成最後の日を迎えたのではないか。日めくりカレンダーを1枚やぶれば、元号が改まる。季語なら晩春の「行く春」よりも、歳末の「年惜しむ」の気分だろうか。

▼もちろん「年」は、平成の30年余りの日々である。昭和末期の重苦しい自粛ムードはみじんもない。思い思いに大型連休を楽しむ。初めて経験する普段着の改元カウントダウンだ。イベントを楽しむ感覚と、来し方を振り返る旧懐の情がまじる。きょうの列島の表情を記録した映像は後世、貴重な史料として参照されよう。

▼「去年(こぞ)今年貫く棒の如(ごと)きもの」。旧年から新年に至る時の流れの実感を詠んだ高浜虚子の一句が、改元前日の心象と重なる。暦が改まっても、日々の営みは変わらない。月並みの尊さのようなものを吟じたのだろうか。翻って、平成から令和を貫く「棒の如きもの」があるとすれば、何だろう。また、何であるべきなのか。

▼天皇陛下は2月の在位30年記念式典で、平成が決して平たんな時代ではなかった、と振り返りつつこう述べられた。「日本は国民の平和を希求する強い意志に支えられ、近現代において初めて戦争を経験せぬ時代を持ちました」。少子高齢化による停滞ではなく、平和と国際協調の精神こそ時代を貫く心棒にしたいものだ。

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