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増えるESG投資の運用残高 3300兆円、質向上課題に

Earth新潮流 日本総合研究所理事 足達英一郎氏

環境・社会・ガバナンスを巡る企業の取り組みを投資の分析と意思決定に組み込むESG投資で、世界の運用残高が年率約16%の勢いで成長を続けている。

欧州(ドイツやフランス、英国など13カ国)と米国、日本、カナダ、オーストラリア・ニュージーランドの世界主要5地域の業界団体の調べに基づく「世界持続可能性投資報告」が1日に発表され、運用残高が初めて30兆ドル(約3350兆円)を突破したことがわかった。

ESG投資はこの数年、日本でも認知度を上げてきている。2016年から18年の日本の投資残高の成長率は、年率約115%。カナダを抜き、欧米に次ぐ世界3位の地域になった。

調査結果で興味深い点は他にもある。投資対象としては、上場株式が51%とほぼ半数を占めたものの、債券が36%、不動産3%、未上場株式・ベンチャーキャピタルが3%を占めた。

日本ではESG投資というと「上場株式」が想起されるが、世界で最も運用残高の大きい欧州では債券が株式より多いことが既に知られている。今後、世界主要地域全体としても上場株式以外の比率がさらに高まっていくと予想される。

日本でも9日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「グリーンボンド(環境債)」などへの投資機会を視野に入れることを発表している。

投資家の種類別で、機関投資家の比率がまだ75%を占めるものの、個人投資家の比率が25%にまで高まってきたことにも注目したい。2年前の調査に比べて5ポイント上昇している。別の世論調査では、1980年以降に生まれた世代は、ESG投資に強く共感していることが指摘されており、個人投資家の関心の背景となっている。

一方、欧州では、専門家が運用する投資残高全体に占めるESG投資の割合が、53%から49%に減った点も目を引いた。すべての投資行動がESG投資となると予測するのは早計であり、先頭を走る欧州では一種の成熟段階に突入しているようにも見える。報告では、調査における定義・基準がより厳密化されたためとも説明されている。

日本でESG投資の運用残高が専門家の運用する全体残高に占める割合は、18.3%。まだ伸びしろは大きいとの観測もある。ただ、環境・社会・ガバナンスの課題を投資行動に組み込む際に、方法論を精緻にしたり、説明責任を全うしたりといった「質の向上」も同時に問われてくることは間違いないだろう。

[日経産業新聞2019年4月26日付]

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