春秋

2019/4/25付
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日本の交通事故の特徴は、「車が人や自転車をはねる」である。当たり前のように思えるが、欧米では死者の多くが車同士の事故によるもので、歩行中や自転車走行中の死者は全体の2~3割ほど。それが日本では約5割にのぼる。弱者に厳しい交通環境といっていい。

▼歩行者が巻き込まれる事故のニュースが連日報じられている。運転技能の衰えや漫然運転など指摘される原因は様々だが、運転する責任を軽んじ、周囲への配慮を大きく欠いている点は共通する。日本自動車連盟(JAF)の調査では、信号がない横断歩道を歩行者が渡ろうとしても、停車する車は1割に満たないという。

▼海外の人が首をかしげる日本の風景に「歩道橋」がある。多くは昭和期に自動車の急増を受け、歩行者を橋の上に避難させる発想で設けられた。車道を走るはずの自転車も歩道へ誘導した。事故を防ぐ緊急対策の効果はあったが、他者に不便を強いようとも道路は車が優先、との意識を定着させてしまったのかもしれない。

▼事故発生後24時間以内の死者数は、昨年戦後最少を更新した。それでも3532人である。平成の30年間では22万人を上回る。地方の中核市が丸々1つ消えてなくなった計算だ。お年寄りが渡っていると、途中で信号が赤になってしまう。そんな横断歩道にも、高度成長期の残滓(ざんし)を見る。令和の時代には持ち越したくない。

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