「出会いの春」悩みと工夫
SmartTimes WAmazing代表取締役社長CEO 加藤史子氏

2019/4/24付
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私は人の名前と顔を一致させて覚えるのが苦手だ。特にビジネスパーティーや大規模カンファレンスで1度だけあいさつした方というのが難しい。過去にお目にかかったのに、2度目に会ったときも名刺を差し出してしまい「1度、お会いしましたよ」と相手に返されて申し訳なく恥ずかしい気持ちになる。

慶応大卒、1998年リクルート入社。ネットの新規事業開発を担当した後「じゃらんリサーチセンター」に異動し、観光による地域活性化事業を展開。2016年WAmazing創業。

慶応大卒、1998年リクルート入社。ネットの新規事業開発を担当した後「じゃらんリサーチセンター」に異動し、観光による地域活性化事業を展開。2016年WAmazing創業。

私は名刺管理アプリを利用しているのだが、昨年1年間だけで1500枚以上の名刺交換をしていた。1年365日、休日も含めて平均4枚という計算になる。覚えられないのも無理はないと自分を慰めつつも対策を考えてみた。

1つ目は復習だ。心理学者のエビングハウスが実施した「無意味なつづりを暗記させたあとの保持率」という実験結果による「忘却曲線」は有名で、再学習による忘却防止の可能性を指摘している。20分後には42%を忘れ、1時間後で56%忘れる。それが9時間後では64%に達する。

その後は緩やかになる。1日後で67%忘れ、2日後には72%となる。6日後が75%、そして31日後で79%だ。つまり記憶してから1日の間に急激な忘却が起こるが、その後は緩やかに進むということだ。

だから「会ったその日のうちの復習」が有効になる。またこの実験は「無意味なつづり」の忘却度合いなので、意味のある内容や自分に関係のある内容なら記憶に残る率が高くなる。大量の名刺交換の後には10分の時間をつくって今後の仕事で連携できる可能性を考えながら名刺スキャンとデータ化を終えれば、記憶の定着率は上がりそうだ。

2つ目はテクノロジーによる解決だ。「こんな眼鏡なら10万円でも買いたい」という物を考えてみた。

その眼鏡をかけているとレンズ越しに見た人物が即座に顔認識される。そして氏名やインターネット上の関連情報、フェイスブック内のプロフィールが見える。さらに名刺データベースを参照して所属や部署名や過去の名刺交換履歴、共通の友人などが空中にAR表示されるというものだ。

次世代通信規格「5G」も実用化に向けて進んでいるし、顔認識技術は現在でもかなり精度が高くなっている。すでに実現は可能ではないだろうか。相手に気づかれないように視線の動きをおさえながら必死にネームタグを読み取ろうとする努力も、不要になる。

ビジネスカンファレンスやパーティーでスムーズに振る舞えるようになり、事前情報を得ることで相手との深く有意義なコミュニケーションも実現できるだろう。欲を言えば、顔認識の眼鏡をかけていると周囲に気づかれないようにコンタクトレンズ型も欲しい。

誰か開発してもらえないだろうか、と真剣に思う。とにかく、季節は「出会いの春」。悩みつつ工夫をしつつ、新たな人との縁から新たな事業機会を見いだしていきたい。

[日経産業新聞2019年4月24日付]

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