春秋

2019/4/20付
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東京メトロ丸ノ内線の車両にスプレー塗料で落書きしたとして、警視庁は器物損壊と建造物侵入の疑いでオーストラリア国籍の男を逮捕した。先日、本紙に客車の写真入りで、こんな記事が載っていた。都内では、別の路線でも同様の落書き被害が相次いでいたという。

▼動画投稿サイトを見て、驚いた。深夜、車両基地に男たちが侵入し、落書きする様子が撮影されているではないか。アートを気取った愚行だ。が、音楽とともに再生される凝った映像は好事家の間で評判らしい。「落書きと芸術」で想起されるのは、英国を中心に活動する正体不明の路上アーティスト、バンクシーである。

▼今年1月、バンクシーの作品に似た傘をさしたネズミの絵が、東京都港区の防潮扉で見つかった。小池百合子都知事は、描かれた部分を取り外し、大型連休に都庁舎で展示する方針を表明した。無許可の落書きは処罰の対象だ。地下鉄の一件との落差は何なのだろう。芸術性や財産的価値がありそうだから大切にするのか。

▼バンクシーはネズミというアイコンを通じ、権威主義的な風潮を皮肉っているようにも見える。都の対応はその批評精神の対極にある。作品の真価を認めるなら、路上の表現を庁舎に移して展示する方法も疑問だ。手に取るな、やはり野に置けバンクシー、である。実は贋作(がんさく)だったという結末なら……。アートとは奥深い。

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