2019年5月24日(金)

春秋

2019/4/19付
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今や懐かしいが「昭和元禄」なる言葉があった。言い出したのは後に首相となった福田赳夫さんらしい。前の東京五輪のころ。高度成長の結果、物質至上主義が国を覆い、江戸期の元禄年間の世相に似ることを指摘した。平和を享受し社会も成熟しつつあったのだろう。

▼この古いフレーズを手がかりに、歴史家の磯田道史さんが、こんなエッセーを雑誌「三田評論」に寄せていた。「平成は宝永にあたる」。元禄の次の元号だ。当時は大地震が列島を襲って、その後、富士山まで噴火した。新田の開発は低地への津波などで勢いが鈍り、それまで増えていた人口も頭打ちになりだしたという。

▼相次ぐ天災と人口減。着眼の妙に思わずひざを打った。さて、新しい元号も決まって、その先も何やら気になる。ちなみに宝永の次は正徳だった。ものの本には、儒学者の新井白石が幕政の実権を握り、儀礼を重んじ賄賂を禁止するなど刷新をはかった、とある。そして、もっと重要なのが経済の再建への取り組みらしい。

▼元禄から宝永の時代、幕府は金の量を大胆に減らした小判を鋳造し、莫大な通貨発行益を得た。この江戸のリフレ策はインフレを呼び、庶民を苦しめたと伝わる。白石は金の量を元に戻し、沈静化を図ったが、逆にデフレを招いたようだ。通貨や財政の政策の転換は難路を慎重に進むべし。正徳から令和への教訓だろうか。

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