ESGの「見えない価値」定量化 投資家向け発信始まる
Earth新潮流 日経ESG編集部 半沢智

2019/4/19付
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企業と投資家の関係が新たな段階を迎えている。企業価値の尺度としてESG(環境・社会・ガバナンス)を無視できなくなり、非財務情報の説明が不可欠になっている。こうしたなか、ESGの「見えない価値」を定量的に示し、投資家などにアピールする企業が出てきた。

エーザイはESGの価値を示す指標としてPBR(株価純資産倍率)を使い、決算説明会や投資家との対話の場で発信している。

PBRは、会計上の企業価値(純資産)に対して市場での評価(株価)が何倍になっているかを示す指標だ。PBRが1倍以上の部分は財務的な価値以外を示しており「見えない価値」と捉えられる。この部分をESGの価値とみなす。

エーザイはグローバルに事業を展開する医薬品メーカーだ。医薬品は研究開発から事業化までに10~20年かかるものも多く、長期的な視点を持った投資家への訴求が欠かせない。目先の業績だけでなく、知的・人的資本などを含む非財務情報の価値を投資家に理解してもらい、中長期の投資家を呼び込む狙いがある。

同社の柳良平CFO(最高財務責任者)は、「ESGの価値を定量的に示すことで、投資家への訴求力が増す」と話す。

日本企業のPBRは、海外企業と比べて低い。米国企業の平均PBRは約3倍、英国やドイツは約2倍なのに対して、日本企業はここ10年間ほど1倍前後で推移している。

日本企業のPBRが低い理由は2つ考えられる。

ひとつはROE(自己資本利益率)の低さだ。PBRは、ROEとPER(株価収益率)の積で表される。ROEが低ければPBRも低くなる。

もうひとつはESGの評価が低く見積もられている可能性だ。ESG情報を踏まえたIR活動や情報公開が不十分な可能性がある。

投資判断にPBRを活用する投資家もある。日本株投資に特化した独立系投資顧問会社のいちごアセットマネジメントは、「PBR1倍以上」を議決権行使基準として定めている。過去3年間と直近3カ月間の平均PBRが1倍未満で、今後の改善が見込めないと判断した場合は、原則として代表権を有する取締役の選任に反対票を投じる。

同社のスコット・キャロン社長は「ESGの取り組みは企業の使命。価値創造の源泉を計る指標のひとつとしてPBRを重視している」と話す。

ESGの「見えない価値」を示す取り組みが、企業価値評価を左右しそうだ。

[日経産業新聞2019年4月19日付]

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