2019年6月17日(月)

チョコ店「ミニマル」 信頼と期待、お金集めの支えに
奔流eビジネス (通販コンサルタント 村山らむね氏)

コラム(ビジネス)
ネット・IT
2019/4/19付
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NIKKEI MJ

小売りの世界でサブスクリプション(定期課金)型サービスやクラウドファンディングが広がっている。商品はもちろん、世界観や企業とのつながりに対価を支払う消費者が増えてきたように思う。

ビーン・トゥー・バーのミニマル。運営会社の山下貴嗣社長(右)は顧客と顔の見える関係作りに力を入れる

ビーン・トゥー・バーのミニマル。運営会社の山下貴嗣社長(右)は顧客と顔の見える関係作りに力を入れる

カカオ原料からこだわったビーン・トゥー・バーチョコレートの人気店ミニマル。6月に開業する店舗にからみ一口8千円から1万円のクラウドファンディングを始めたところ、10日で900口以上の応募を集め話題となった。

運営するβace(ベース、東京・渋谷)の山下貴嗣社長は、組織人事コンサルティングのリンクアンドモチベーションの出身。日本の優位性で勝負できるものづくりで起業したいと友人に相談したところ、チョコが候補に上がった。「日本人独特のきめ細やかな商品設計で今までとは違う品を世に出したい」と、2014年に事業を開始。大手デパートにも出店し、順調にファンを増やしている。

成功したポイントは3つある。1つは商品の本物感。チョコ作りの発想を足し算から引き算へと転換し、カカオと砂糖だけを原料とする。口に入れるとカカオをじかに感じ、少しザラザラした感触の後でじわりと溶けていく。とろりとしたショコラティエの品とは一線を画す。

ファンは男性が4割を超える。当初から30.40代の男性を意識し、「コーヒーや洋酒、シガーなどと並ぶ嗜好品として受け入れてもらえるように商品をデザインした」。店頭では各産地のチョコを試食してもらい、顧客は時間をかけて納得のいく一品を選ぶ。フェアトレード商品だが、おいしさを優先している。

2つ目は産地との共創だ。カカオ豆は良いものを作って価格を交渉するプロセスを欠いていた。山下さんが現地で「高く買う」と言っても、量の経済になかなか勝てない。少しずつ産地の信頼を勝ち得て、取引を拡大したという。

その過程で、出来上がった商品や顧客の喜びの声などを、生産者に見せている。人の動機づけにたけた山下さんならではの技術だろう。

最後は顧客との共創だ。イベントを頻繁に催し、客同士が顔を合わせる機会を作る。最初のイベントに参加した人にしか案内を出さない限定イベントに特に力を入れる。

むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。

むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。

「100人の1回買うお客さんよりも、1人の100回買うお客さんを大切にする」のが信念。ファンとの関係づくりは自然に楽しんでいるようで、商品とともに客を自慢する様子に感銘を受けた。

今回のクラウドファンディングでは例えば、新店舗で発売する3250円(税抜き)のガトーショコラ2種類と特典がついた会員資格がセットで1万円だった。1万円のうち約3千円は期待価値となる。100口限定だったが反響が大きく口数を増やした。

山下さんは「300くらいは売れるかなと思っていたが、1千に届くくらいとは心底驚いた」と話し、「ガトーショコラを焼くのが大変だ」とうれしそうに語っていた。

クラウドファンディングでは今までの信頼感とこれからの期待感が目に見える。信頼と期待で顧客から先にお金を集め、自分たちのペースでモノを作る取り組みが存在感を増すだろう。ミニマルのやり方はヒントを与えてくれる。

[日経MJ2019年4月19日付]

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