2019年5月21日(火)

春秋

2019/4/18付
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暗闇にカジノの派手なネオンが浮かび上がり、けたたましく警報が鳴る。盗んだ札束を詰め込んだ車が走り出てくる冒頭の場面で、もう胸がおどった。1979年に公開された映画「ルパン三世 カリオストロの城」はその後、繰り返しテレビで放映された大ヒット作だ。

▼ヨーロッパの公国を舞台にしたこの活劇でもあくせくせず、純粋だけれどやや冷めたルパンはテレビ版そのままだ。しかし演出した映画監督の宮崎駿さんは公開の翌80年、ルパンが"時の子"なのは「まぎれもなく一昔前」だったと自著に書く。やがて日本中が熱に浮かされるバブル時代の到来を予感していたのだろうか。

▼11日に81歳で亡くなった原作者で漫画家のモンキー・パンチさんは米国のアメコミに大きな影響を受けた。アニメ「トムとジェリー」がヒントになったルパンと銭形警部の追跡劇はコミカルで軽快、仲間の次元大介や石川五ェ門も男気あるがニヒルで無口だ。彼らは豊かな消費生活が生んだ「シラケ世代」の主人公だった。

▼お色気ありアクションありのしゃれた青年向け漫画は、激しい学生運動と入れ替わるかのように若者の支持を得る。熱血スポ根モノの主人公とは正反対、バブルの羽振りのよさとも無縁。熱い時代と冷めた時代を繰り返し、平成も終わろうとする今、パンチさんならばどんな"時の子"としてルパンを世に登場させただろう。

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