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中小にこそ「金融包摂」

SmartTimes GMOペイメントゲートウェイ副社長兼GMOベンチャーパートナーズファウンディングパートナー村松竜氏

貿易金融という渋いテーマがある。調べてみるととてつもなく大きな市場があるが、市場の大きさ以上に大きな意味がある。それは経済の基盤を流れる血流であり、不足したり滞ったりすると生存活動が機能しなくなるからだ。後述する国の成長に絶対必要な「外貨」も入ってこなくなる。

貿易金融とは輸出入に必要な資金の提供や信用の供与などのことだ。そこでは「膨大な書類のバケツリレー」が行われる。輸出者と輸入者、船舶会社、税関、金融会社など複数の「貿易バリューチェーン」が貨物や通関、決済などの膨大な書類をリレーするのだ。

しかし輸出入には時間がかかる。モノの輸送だけでも数カ月はかかるうえに、国をまたぐ(通貨が替わる)だけに買い手は代金を先に払いたくない。売り手は代金をもらうまではモノを輸送したくない。ここでは信用と資金の融通・決済が重要なファクターで、間に誰かが入る必要がある。

これまでは銀行や、日本では商社が金融部分を担っていた。ここにデジタルトランスフォーメーション、機械学習の波が来た。フィンテック革命はキャッシュレスの世界だけで起きているわけではない。実はこの貿易金融上で、それもインドで、フィンテックイノベーションが起きている。

インドの輸出規模は年間44兆円。そのうち18兆円は中小企業による輸出だという。銀行からすると「1回の融資額が小さすぎて商売にならない」「本人確認の手続きが煩雑すぎる」「担保もない」などの理由で融資に二の足を踏む。世界に輸出できる製品や加工品を持っているのに、資金と信用がないため輸出をあきらめている中小企業が何十万社とある。一つ一つを見ると小さいが、実は総額18兆円の問題がここにある。

だから問題解決に動いたインドの貿易金融スタートアップ、ドリップキャピタルが注目を浴びることになった。彼らは、まず世界中の貿易バリューチェーンのデータを集めた。どの買い手・売り手が信用できるのか、過去どういうトラブルが起きたのか等のデータを機械学習で分析し、与信を自動化したのである。

これまでベテランの審査マンが長年の経験と勘を頼りにやって来た仕事だ。これで膨大な書類作業がなくなっただけでなく、従来の融資には不可欠だった担保の概念も不要になる。

海外輸出をあきらめていたインドの中小企業に道が開けた。ドリップキャピタルの顧客はインドの外にも広がり初めている。創業3年のスタートアップは、米大手ベンチャーキャピタルの出資も得てグロースステージに乗った。インドは成長期にある巨大な新興国なので、中小企業の輸出が増えることは外貨獲得や経済の安定成長に重要だ。中小企業のファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)を最新のインターネット技術が可能にした。

[日経産業新聞2019年4月17日付]

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