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「スローニュース」じわり SNS型過剰消費に変化?

先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

NIKKEI MJ

ニュースはかつてないほど領域を広げている。スポーツや芸能はもちろん、料理も今では重要なニュースの源だ。筆者が携わっているニュースアプリ「スマートニュース」は多くのメディアからニュースの配信を受けており、総数は1日に数万件にも上る。アプリで表示しているのは選択したその一部にすぎない。

脱速報を掲げる「ザ・コレスポンデント」は9月に英語版を始める予定

自由気ままに多くのニュースに触れられるようになったのは、消費者にとって大いに喜ぶべきことではある。だが、同時に苦痛でもあるようだ。

NHK放送文化研究所の2018年の調査によると、「今の社会は情報が多すぎると思う」と感じる消費者は8割を超えるという。時にはニュースを「止めたい」「絞りたい」という心理になってもおかしくはない。

「スローニュース」という言葉がここ数年、少しずつジャーナリズム周辺で使われるようになっている。ファストフードに対してスローフードというライフスタイルが着目されていることが念頭にあるのだろう。

速射砲のように次々と繰り出される「速報」を追い続けるのをやめ、一つの話題をじっくり考えてみる。ニュース過剰消費のライフスタイルにストップをかけたいという考え方だ。

スローニュースを掲げるメディアに「ザ・コレスポンデント」がある。「アンブレーキング・ニュース」、つまりブレーキング・ニュース(ニュース速報)を扱わないことをスローガンにしている。

広告は掲載せず、本当に求められるニュースをじっくり掘り下げて届けることをめざす。オランダの新興メディアだが、多くの市民から寄付金を集めることに成功して2013年にサービスを開始。9月には英語版も始める予定だ。

米ダウ・ジョーンズや英BBCニュースの大物らも「トータスメディア」を起業した。亀を意味する社名からもわかるように、本当に知るべき考えるべきニュースに触れるには「急がば回れ」と訴える。まもなくサービス開始の計画だ。

大手SNS(交流サイト)のフェイスブックやツイッターが無制限にニュースを繰り出すのに対抗し、「有限」「消化できる」を標語にして、1日5本以下に絞って記事を会員に配信する。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

国内だけでなく世界で偽ニュース対抗やニュースリテラシーの向上キャンペーンを張る老舗のBBCも、この分野には熱心だ。ニュース配信にあたって、真偽検証や背景を深掘りすることに力を入れている。

いずれのメディアも、ニュースの数を単純に減らすだけでなく、取材や調査に時間をかける調査報道と呼ばれる分野に力点を置くようだ。

同時に、SNSと一線を画すことでも共通する。刺激的な情報に触れてはすぐさま知人とシェアといったSNSが介在するニュース消費スタイルが、真偽不明の情報が飛び交う現状の背景にあるとみているようだ。

勢いのあった米新興メディアは広告収入が減り、相次ぎ人員削減に踏み切っている。スローニュースが広告モデルに対抗できるかは予断を許さないが、クラウドファンディングで資金を集めて事業を立ち上げ購読料というユーザーからの課金で運営するという仕組みは、新たなひとつの方向かもしれない。

[日経MJ2019年4月14日付]

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