セブン、人手不足対策の次は 系列内外、顧客データ共有
奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)

2019/4/12付
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NIKKEI MJ

深刻な人手不足から24時間営業問題で揺れるコンビニエンスストア業界。徹底的な効率化を進めてきたが、フランチャイズモデルを維持するために新たな対応を迫られている。政府が人手不足解決策とする外国人労働者の受け入れが進まない場合は、コンビニだけでなく小売業界全体でIT(情報技術)をさらに活用した無人化や省人化が広がりそうだ。

セブン&アイはスマホアプリを通じて顧客の行動データの把握・活用を進める

セブン&アイはスマホアプリを通じて顧客の行動データの把握・活用を進める

しかし、こうした無人化を目指しただけの店舗では、巨大な自動販売機と同じになってしまう。米アマゾン・ドット・コムのようなEC(電子商取引)と戦うためにも、小売業は新しい価値創造が求められている。コンビニの雄であるセブン&アイ・ホールディングスは次の情報流通業への挑戦に乗り出している。

情報流通業としてのセブン&アイの第1段階は、業界に先駆けて全ての商品に「バーコード」をつけたことだ。小売りよりもメーカーの力が強かった頃に必死に協力を求め、全国で全商品のPOS(販売時点情報管理)データがリアルタイムで取得できるようになった。商品の販売情報を握り、メーカーに対して優位に立つ。それが今のコンビニの強さの原点となっている。

セブン&アイの第2の挑戦が、強さの源泉であるデータを「商品の販売」から「顧客の行動」へと大きくシフトすることだ。商圏内の顧客一人一人の行動を捕捉し、どんな顧客がどんな行動をして購買しているのかを、「7iD」という顧客IDをベースに把握・活用する。壮大な試みはすでに始まっている。

そのひとつが2018年にセブンイレブンとイトーヨーカー堂で始めたスマートフォンアプリだ。そごう・西武、ロフト、赤ちゃん本舗とグループ全体にアプリは拡大し、合計で1千万ダウンロードを超えた。

顧客が見え、2割の顧客が8割の売り上げをあげるパレートの法則が当てはまることが確認できた。セブンの複数店舗を使ってもらうキャンペーンでは、利用店舗数が増えたことも分かった。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

さらに先へと進む。グループ内の膨大な顧客行動データを異業種のデータと組み合わせて分析する試みが「セブン&アイ・データラボ」だ。交通や自動車、クレジットカード、エネルギー、商社など約20社が集まって共同で研究している。

例えばカードのデータと組み合わせると、インバウンド(訪日外国人)がセブンの約8500店舗を訪れていることが判明した。免税対応の店数よりもはるかに多く、訪日客対応のヒントが発見できた。自動車の走行データと掛け合わせると、店舗の駐車場が入りにくいかどうかが分かり、駐車場配置の改善に役立てられそうだという。

1千万超のIDがこのまま増えればセブン&アイは日本国内の膨大な顧客の行動データを握ることになる。テレビ広告を流すよりもセブンのアプリにクーポンを出した方が商品の購買につながる効果が判明すれば、メーカーは販促費をシフトさせるかもしれない。セブン&アイの顧客IDを中心とした情報流通業としての価値創造は、アマゾン脅威論を一蹴するだけの巨大な可能性を感じさせる。

[日経MJ2019年4月12日付]

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