2019年6月26日(水)

春秋

2019/4/10付
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いろんな人がいたんだなぁ。事典で古いお札の顔をながめ、感じ入った。明治時代には神功皇后が登場した。日本書紀によると、男装して朝鮮半島への出兵の指揮をとったというヒロインである。皇位を狙う僧、道鏡の追放に力を尽くした和気清麻呂の姿も見えている。

▼戦中に入ると皇居前広場の楠木正成の像、戦後すぐには勤勉のモデルである二宮尊徳や、ダルマ宰相こと高橋是清も選ばれた。それぞれに時代を映し、興味は尽きない。きのう発表された5年後からの新しいお札の3人の場合、その生涯や業績は、現代人が今なお取り組むさまざまな課題の解決をめざしたともとれようか。

▼1万円札の渋沢栄一は起業の精神に満ちあふれる一方で、倫理と経済の両立を理想とした。5千円札の津田梅子は満6歳で渡米するなど2度の留学を経て、個性重視の女子教育にまい進している。さらに、千円札の北里柴三郎は、死をもたらす感染症の原因を突き止め、治療法を確立し、多くの人の命を救うこととなった。

▼右から左へ渡すだけでなく、時には手にとって、じっくり偉業をしのびたいものだ。だが、政府は6年後のキャッシュレス決済比率を4割とする目標を立てている。3人のお札の寿命が20年として、そのころ比率はもっと高まっていよう。仲よくなりたいのに、最初から疎遠になることがわかっている関係って、いったい。

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