春秋

2019/4/7付
保存
共有
印刷
その他

一瞬、何かの記念館か、とも思う。先月、東京・北千住に3年ぶりに再オープンしたイトーヨーカドー食品館である。入り口の畳一枚大のパネルに、セブン&アイ・ホールディングスの伊藤雅俊名誉会長、兄で早世した譲氏、母のゆきさんの3人の顔写真が並んでいた。

▼わが商いの原点「千住店」、そう題された一文には、兄と母が戦後、疎開させていた行李(こうり)1つの品を元手に、ここで商売を始めたことなどがつづられている。ゆっくり動くエスカレーターがつなぐフロアをめぐると、昭和のころの店頭の写真が何枚もあった。ここが近隣の人々の交差点としてにぎわっていたことがわかる。

▼あれから幾星霜。時代や消費者の求めに応じて変身をとげた小売業の一形態コンビニが、身もだえしている。出店増による競争の激化や長時間営業、人手不足でオーナーの苦境は深まるばかり。社内の対話不足を理由にチェーンの社長が辞め、経産相までしゃしゃり出て「改善へ向け行動計画を」と各社トップへ注文した。

▼「久々に気分よく買い物できました」。食品館に「お客様の声」がはられていた。地元は新鮮な品との出合いや店員との交流も望んでいたようである。一方のコンビニはセルフレジなど省人化を進めるとか。同じ流通グループ内でさえ違う道を歩まざるをえぬ環境下。さらなる進化もよいが、古きに学ぶのも大切と思える。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]