2019年5月22日(水)

音とブランド 生活に浸透
SmartTimes ネットイヤーグループ社長 石黒不二代氏

コラム(ビジネス)
2019/4/8付
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マーケティングにおいて、音の効果は侮れないものだ。何十年も前だが、いまだに私たちの記憶に鮮明に焼き付いている大手化粧品会社の夏のCM。新しいモデルと脳裏にガツンとくる音楽の組み合わせで、商品が売れ、音楽も売れた。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

今も、昔からある音楽をCMに起用しているブランドが多い。「家に帰れば」の積水ハウス、「この木なんの木」の日立グループ。私たちは、遠い記憶にあるCMの曲にノスタルジアを感じるが、こうして、聞き覚えのあるメロディーに乗せて、ブランド名を生活者の中に浸透させていく手法が増加傾向にある。

従来のマーケティングはほとんどが視覚へのアプローチだが、認知に強い視覚でなく、「いかに想起(思い出させる)を創り出すか?」ということも重要で、この点において、音楽や音は効果的である。

とはいえ、音楽の使い方は以前のそれとは違う。効果的な今のマーケティング例を挙げてみよう。

電子マネー決済サービスでは、各サービスごとに決済音を戦略的に活用している。例えば、「WAON」は決済音に犬の鳴き声を使用し、ブランドへの親しみやすさや楽しさを演出している。鳴き声という簡潔さ、操作したことが明確に分かる音のデザインで、決済の工程を楽しく感じさせる存在になっている。なおかつ、音が鳴る時に「このサービスで決済している」という行動を利用者に改めて想起させている。

リクルートも音を活用した取り組みを始めている。同社の各サービスの知名度は高いが、生活者がそのリクルートというコーポレートブランドを普段から意識することは多くない。そこで目指すべき世界観である「Follow Your Heart」を音楽の力で伝えようと「Follow Your Heart & Music 自分の心に従え。音楽と一緒に」という企画を2年連続で実施している。

「自分自身であること」を体現しているアーティストをピックアップし、彼らが書き下ろす楽曲を順次公開していく手法で、今回起用したのは、再生回数が数万回のアーティストと100万回を超える知名度がバラバラな5組のアーティストたちだった。認知を得るためだけであれば知名度の多いアーティストを起用すべきだが、異なるターゲットの想起を得るためにわざわざ別な音を選んだ。

こうした事例からも分かるように、音を用いたマーケティングが多様化してきている。通信規格5Gの商用化が始まり、スマートスピーカーの普及による音声指示、検索の一般化や動画・音楽配信サービス、音声広告の進化によって、視覚だけでなく世の中のあらゆる場所が「音」でのコミュニケーションポイントとなっていくだろう。より深い共感を求めて音が人々を刺激していく。

[日経産業新聞2019年4月8日付]

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