2019年6月16日(日)

AI利用、企業に求められること 個人情報保護にルールを
先読みウェブワールド (瀧口範子氏)

コラム(ビジネス)
ネット・IT
2019/4/1付
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NIKKEI MJ

最近、テクノロジー関係の展示会から帰ってくると、腹立たしい気持ちや後悔の念が湧いてくることが多い。プライベートなデータを、うかつにも相手にあけ渡してしまったと気づくからだ。

1月開催のCESでは、コンピューター画像で洋服を認識するAIなども登場した

1月開催のCESでは、コンピューター画像で洋服を認識するAIなども登場した

「あなたの見た目の年齢や今の感情を計測します」。デモのうたい文句に乗せられ、好奇心と職業意識から試してみる。そして「結構正確に年齢がバレるな」「今の感情は、うれしいが○%、驚きが○%なんだ」などと感心する。

ところがその興奮が冷めると、自分の生体データが、人工知能の学習用に取り込まれてしまったと我に返るのだ。

こうした参加型デモが増えていて、AIテクノロジーが現実社会で使われることが多くなっているのがわかる。便利だと面白がるのもつかの間、空恐ろしい気分がこみ上げてくるのだ。

もっとも強く感じるのは、無力感だ。監視カメラが街の方々にあり、スマートフォン(スマホ)のカメラはいつもこちらを向いており、家ではAIスピーカーのスイッチがオンになったままだ。展示会のデモを目にすると、高性能になるばかりのAIには到底太刀打ちできないと、ほぼ諦めの感情が湧いてくるのだ。

ただ、やっと安心材料が出てきたと感じるのは、テクノロジー企業がAIの利用についてガイドラインを設けるべきだと動き出したことだ。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

これまでは、プライバシー擁護組織や権利団体が問題意識を訴えて、大学やNPOが中心となって組織を作り、AIの倫理を考えることの重要さを強調してきた。

だが最近ではマイクロソフトが、顔認識技術の利用については規制が設けられるべきだとはっきりとした主張をしている。これを受けて、本人の明確な合意なしに顔認識技術を用いて個人のデータを収集したり共有したりすることを禁じる法案が、先ごろ上院に提出されたところだ。

グーグルも3月、外部のアドバイザー8人を集めた先端技術外部諮問評議会を設けた。デジタル倫理や公共政策の専門家が含まれている。グーグルは昨年、『AIの倫理原則』も公開した。軍事向けAI開発に約3000人の社員が反対した後に作られたものだ。

マイクロソフトやIBM、インテルも原則を設けている。フェイスブック、アップルなど80の企業・組織は、AIを人間や社会への恩恵として利用するベストプラクティスを求める「パートナーシップ・オン・AI」も組織している。

ただ、これまでのAIの原則はどれも似ていて、こちらからすると「当然」と感じる項目ばかりだ。ここ数年、個人データが商売のために使われるばかりか、漏洩などもある。テクノロジー企業の真剣さが問われる事態が続いた後では、どんな局面で何を優先するのかなどを記した、もっと具体的なルールを示してほしいと思うのだ。

中国では、AIでコンサート会場にいた6万人の中から犯罪の容疑者を探し出した。今やAIは唇の動きも読めるという話を耳にすると、企業の動きは突き進むAIの利用に到底追いついていないと感じてならない。

[日経MJ2019年4月1日付]

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