この道 古井由吉著 生と死往還する孤高の文業

批評
2019/3/30付
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日本経済新聞 朝刊
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年を取って体力が衰えると、夜の眠りが浅くなる。眠るにも体力が必要なのだ。未明に目覚めて時間を持て余し、そこはかとなく遠い記憶をたどっていると、過去のほうが生々しく、今現在の自身の輪郭が妖しくほどけていく。そんな思念の運動に、読みながらつい誘い込まれる書物である。

老いの深まった語り手の「私」は、幼いころに空襲を体験した世代だ。生家が目の前で焼け、両親の里を転々と疎開した。身辺には戦死者や病死者が…

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