テック企業に迫る危機
新風シリコンバレー 米インタートラストテクノロジーズマネジャー フィル・キーズ氏

2019/3/26付
保存
共有
印刷
その他

2019年2月14日に流れた2つのニュース。無関係に見えるが、米大手テック企業に迫る危機を示した。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

1つは米上院がウィリアム・バー氏を米司法長官に承認したこと。もう1つは強い反発に応えて、アマゾン・ドット・コムがニューヨーク市に第2本社を設立する計画を白紙に戻したことだ。2つのニュースに共通するのは、インターネット時代の初期から登場したアマゾンやフェイスブック、グーグル、ツイッターなどの大手テック企業への米国市民の信用が薄まっていることだ。

インターネット時代が本格的に始まった1990年代から、テック企業は一般ユーザーや社会に益を与えながら前向きに市場を開拓するというイメージを押し出した。だが、2010年代が終わりを迎えようとする現在、インターネットはほとんどの消費者が頼れるインフラに変身した。市民がこの状態を理解すると同時に、個人データの乱用や選挙への干渉などテック業界に関連する様々なスキャンダルが流れて、高まった信用を薄めてきた。tech(技術)とbacklash(反発)をもとにした「テックラッシュ(techlash)」という新しい言葉も登場した。

テックラッシュとバー氏の関係は同氏が19年1月に行った上院証言で示された。報道によると、同氏は大手テック業界が独禁法を侵害したかどうかを調べる可能性を示した。この発言の裏には左派を支援していると思われている大手テック企業が、その独占的な立場を利用して右派の意見を検閲しているという主張がある。

それ以外に、左派と右派の双方に大手テック企業の市場力が高すぎるという懸念もある。もし司法長官をトップとする米司法省が大手テック企業の独禁法侵害の調査を始めるなら、多数の政治家が支援をする可能性がある。

2月14日以降、政府や政治家がテックラッシュの動きを見せる例が増えている。米連邦取引委員会は技術市場での競争状態を検査するタスクフォースを設立すると発表した。20年の大統領選挙で民主党側の指名獲得争いに名乗りを上げているエリザベス・ウォーレン氏も大手テック企業を分散させる政策を提案した。

今、なぜこうした反発が出ているのか。

大手テック企業のサービスはほとんどの米国市民の一般生活に入り込んだ。無料や低料金のサービス提供を支えるために積極的にデータを蓄積した。その戦略がプライバシーを侵害する結果につながったとの発想が広がっている。ほとんど規制がない環境でベンチャーから育った大手テック企業が市場を支配していることへの心配もある。

一般市民との距離が遠すぎるため、大手テック企業の幹部は横柄な態度を取っているとのイメージも強い。ハリウッドの映画では、テック企業の幹部が悪人として登場している件数が増えているもようだ。

米大手テック企業が市民の信用を取り戻す戦略を考える時間が迫っている。

[日経産業新聞2019年3月26日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]