乳がん診断 AIが画像で
SmartTimes BEENEXT ファウンダー・マネージングパートナー 佐藤輝英氏

2019/3/25付
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インド人女性に最も多いがんは乳がんである。2016~17年度版のNational

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

Centre for Disease Informatics and Researchのリポートによると、インドでは13万人以上の女性が乳がんに苦しんでいるとされる。人口10万人当たりの罹患(りかん)率が25.8と高く、患者の生存率も他国と比較しかなり低水準だ。10~14年に乳がんと診断された患者の5年生存率は、66.1%にとどまっている。

インドの女性たちが乳がん検診から遠ざかる理由は複数あるが、大きなものは検査コストと病院へのアクセスの悪さである。有効な検診の一つであるマンモグラフィーも、そのコストに加え、検診時に伴う身体的、精神的な痛みが二の足を踏ませる。さらに、アジア人に多い高濃度乳房では検知率が下がってしまうという課題が指摘されている。

こうした大きな社会問題に挑むヘルステック系スタートアップがバンガロールにあるニラマイ社だ。16年にギータ・マンジュナス氏とニーディ・マートゥー氏という2人の女性研究者によって共同創業された。コア技術は機械学習アルゴリズムで、サーモカメラから取得された熱画像を独自のアルゴリズムによって解析し、細胞のわずかな異常から、乳がんを検知することができるという。

熱画像処理はかなり前からある技術だが、人間の目による診断ではその精度に限界があった。放射線を使わず、痛みもなく、患者の体に直接触ることもない同社の検査技術は、誤診や過剰診断を減らすことができるとされ、米国で人工知能(AI)と機械学習アルゴリズムに関する特許を8件取得している。また、昨年インド医薬品管理局から承認を取得した。

インドでは人口1千人あたりの医師の数が0.78人と極端に少ない。そういった環境下で期待されるのが医療診断、予防医療、検査領域へのAIの活用だ。Center for

検査機材を乗せたバス。中で乳がんの検査ができる。

検査機材を乗せたバス。中で乳がんの検査ができる。

Internet and Societyのリポートによると、インドでの医療ヘルスケアセクターにおけるAI領域での投資は、35年までに9570億ドルの経済効果をもたらすとされていて、大変期待される領域だ。大きな社会問題を解決し、人々の暮らしを豊かで幸せなものにするAI技術の活用を願ってやまない。

ニラマイ社は現在、インド国内の複数の病院・検査センターと連携し、検査の実績を積み上げている。また最近、日本のコンサルティングファームであるドリームインキュベータをはじめとした投資家から、総額600万ドルの資金調達を終えた。インドで産声をあげたこの会社。ゆくゆくはシンガポール、米国、日本へと課題解決の輪を広げていきたいという。

ニラマイはサンスクリット語で、病気からの解放を意味する。AIの力で世界を乳がんから救っていってほしいと強く願う。

[日経産業新聞2019年3月25日付]

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