2019年6月25日(火)

春秋

2019/3/21付
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「間違いだらけのクルマ選び」で名をはせた徳大寺有恒さんは、外国車の表記にもこだわっていた。メルセデスはメルツェデス、ベントレーはベントリィ、ジャガーはジャグァーである。なるべく原音に忠実にという、自動車評論家としての思い入れがあったのだろう。

▼原音へのこだわりが強いのは、高尚(?)なる外務省も同じらしい。外国名の表記にずっと「ヴ」を使ってきた。カリブ海の「セントクリストファー・ネーヴィス」と、アフリカ北西の島国「カーボヴェルデ」――。ところがこんど法律が改正されて「ヴ」をやめるという。「カーボベルデ」など普通の表記になるわけだ。

▼「v」の音は断固「ヴ」である――と言いたい人も多いだろうが、そもそも外来語の表記は国語問題の悩みのタネ。現在の文部科学省の指針では、平易な表記と原音に近い表記の双方を認めている。しかし外務省まで「ヴ」を捨てるとなると、「ヴェネツィア」などと書いてきたちょっとキザな人はまた減るかもしれない。

▼役所が独りよがりでは困るから今回の表記変更はさもありなん。とはいえ世間一般では遊びがあっていい。たとえば伊丹十三さんが半世紀も昔に書いた「ヨーロッパ退屈日記」など、キザを芸にしたような本である。「黒いオーヴァー」「ルーム・サーヴィス」「プライヴァシイ軽視」……。ジャガーはジャギュアだった。

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