革新への壁 破る戦い
新風シリコンバレー WiL共同創業者兼CEO 伊佐山元氏

2019/3/19付
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経済産業省が主催する政府のイノベーター育成プログラム「始動」の4年目が終了した。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

毎年、全国から選抜された120人弱の政府認定のイノベーターが半年にわたる隔週の研修を経て事業計画を作成し、シリコンバレーで起業家から2週間のメンタリングを受け、帰国後はおのおのの組織で実際にプロジェクトを遂行してもらう。参加者も大企業に限らず、ベンチャー企業や市町村まで、年齢も20代から60代までと、起業精神にあふれた人材が全国には思った以上に存在する。

我々も大企業や既存の組織の中でのイノベーション活動の支援と仕組みづくりのため、微力ながら協力している。日本ではベンチャー振興の可能性を感じる一方で、リソースも豊富で、使われていない技術や設備も多い大きな組織でのイノベーションの余地はかなりあると感じている。

隔週の研修を通じて、始動のメンバーが目覚ましく成長していく。デザイン思考を身につけ、自分の解決すべき課題を見定めてビジネスプランを仕立て上げるが、現役の経営者らからなるメンター陣がその案を粉々にする。本当に解決に値する課題なのか? その解決に人はお金を払うのか? 今の自分の組織を利用することで、優位性を発揮できるのか? 多くの疑問と格闘し、もがき合いながら半年にわたって前進した者は顔つきも変わり、立派なイノベーターになっている。

それぞれの組織に戻った後が本番だ。果たして自分の上司をうまく説得し、社長の支援や同僚のサポートを引き出せるように事業の意義や自分の情熱を伝えられるか? 抵抗されても前に進む、強い意志は持ち続けられるか?

イノベーションの活動は、常に抵抗勢力や自分自身の心との戦いである。既存事業の邪魔になるから、規模が小さすぎるから、今は既存の事業が好調だから……。新しい事業への試みを引き留める理由はいくらでもある。もし失敗したら、自分の思い違いだったら。そんな不安もイノベーターを踏みとどまらせる。

これまで多くの事業を立ち上げ、ベンチャーに投資をしてきたが、失敗への不安を乗り越えるのは人の意志の力しかないというのが結論だ。始動の同期や仲間たち、メンターのサポート。周囲の人間を巻き込みながら、勇気をもらいながら、少しでも前進できるか。自らが描いた事業計画をDo(実践)できるか。

シリコンバレーでは本当の失敗というのは挑戦しなかったこと、やらなかったことだとよく言われる。実際にトライして失敗したことは学びであって、成功の過程にすぎない。あのときやっておけばよかったのに、と後悔しない選択肢を取ることが重要だ。

日本の将来を考えるのであれば、過去の延長線上に未来を見るのではなく、自分自身が未来を想像して、未来を創造する主体にならなければならない。始動の出身者たちからなる全国のネットワークが、日本を大きく変えることを期待している。

[日経産業新聞2019年3月19日付]

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