IoTが変えるホテル 効率化と付加価値両立
奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)
深刻な人手不足の解決策のひとつとして、ロボットの大量導入を掲げて話題になった「変なホテル」。実は最近、目玉のロボットの数は大幅に減らされている。挑戦の結果、様々な現実が見えて来たということのようだ。例えばチェックインロボットは残した一方で、荷物搬送ロボットなどは廃止している。荷物搬送ロボットは雨が降ると建物の間を移動できないことがわかるなど、日々の運用に耐えられる機体が少ないというのが現実のようだ。

最近はロボットだけでなく、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を活用した「IoTルーム」を売りにしたホテルも現れた。and factoryが運営するホテル「AND HOSTEL」では現在、複数の施設で約50室の「IoTルーム」が稼働している。
チェックイン時に渡されるスマートフォン(スマホ)が、鍵や客室内のコントローラーの役割を担う。部屋のシーンを朝や就寝時などボタンひとつで選択でき、照明やカーテン、アロマなどが連動して動き出す。料金は通常の部屋よりも高いにも関わらず、稼働率は8割と好調で評判も良い。7割は外国人の利用だ。
客室には近隣の観光情報などのコンテンツを見ることができる専用タブレットや人工知能(AI)スピーカーなども置いてある。
今後、顔認証技術などが進化することで、セキュリティー革新とキャッシュレス化が進み、ホテルのあり方そのものも大きく変わるだろう。ひとつは共用スペースの活用だ。
大浴場、シャワー、トイレ、食堂など共用スペースの状況をデジタルで管理することが可能になれば、効率的な活用と付加価値化の両面が可能になる。すでにカプセルホテルのように寝室以外のフロア全てが共用部みたいな業態にとっては、効率化を進めるためにスマホで予約や状況確認できるようにしているところも増えている。

一方で、and factoryのホテルではバーフロアの状況をカメラで画像分析し、混雑状況をスマホで提供している。混んでいる時を探して新しい出会いを求めにいったり、逆に静かな時を選んでゆっくりしにいったりなど、コミュニティースペースを「宿泊者のニーズにあわせてうまく使ってほしい」と運営担当者は語っている。
共用部での体験価値は高い付加価値を提供できるため、様々なイベントや共通の趣味の人のための施設を設置するなどホテルとしての特徴を出すための様々な工夫が考えられる。
人と人とのコミュニケーションをより全面に出すためのデジタル活用と、徹底的なローコストを実現するためのデジタル活用など新しいイノベーションが新興ベンチャーホテルたちの様々な挑戦から生まれてきそうだ。
[日経MJ2019年3月15日付]
関連企業・業界