2019年7月19日(金)

アジット、自家用車配車アプリ 地方の移動の足補う
戦略ネットBiz

コラム(ビジネス)
2019/3/13付
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NIKKEI MJ

スタートアップ企業のアジット(東京・港)が、移動の足として自家用車をスマートフォン(スマホ)のアプリで呼べる配車サービスを地方で広げる。今春から九州の離島で始め、脆弱な公共交通機関を補う。自家用車で客を有料で運ぶ「ライドシェア」は国内では原則禁止だが、規制の特例を活用して実現させる。

アプリで地元住民が運転する自家用車と観光客を引き合わせ、2地点間を運ぶ(長崎県五島市)

アプリで地元住民が運転する自家用車と観光客を引き合わせ、2地点間を運ぶ(長崎県五島市)

「用事がある時に配車依頼が来たら?」「空き時間だけの稼働で大丈夫です」。アジットは2月、長崎県五島市の久賀島で4月以降に始める実証実験の説明会を開いた。

市などと共同で1カ月間実施する実験ではアジットのアプリ「クルー」で、観光客を島民の運転する自家用車と引き合わせて目的地まで運ぶ。

クルーの基本的な仕組みはこうだ。地図で迎えに来てほしい地点を指定すると、最寄りの登録車が何分で着けるか表示される。目的地と乗車人数を指定して「呼ぶ」ボタンを押すと対応できるドライバーが迎えに来る。依頼をドライバーが受けるかは自身の都合で決められるのでマッチングが成立しない場合もある。

ドライバーは書類審査と面接で選考後に講習し、アルコール検知器なども使い安全を確保する。

実験の背景に公共交通網の脆弱さがある。島内のタクシー会社は1社しかなく車両も5台のみ。レンタカーも1社の3台にとどまる。隠れキリシタン関連の世界文化遺産登録を機に島への観光客が増え、「移動手段が足りない」(五島市)。

実験ではタクシー会社と協力してタクシーの足りない時間帯や曜日をあぶり出し、そのタイミングに限りクルーを使えるようにすることなどを検討する。タクシー会社の経営に配慮する狙いだ。

無許可で自家用車を使い有料で人を運ぶ「白タク」行為は原則禁止だ。一方で国土交通省は運行の実費や手数料、客が自発的に出す謝礼の受け取りに許可は要らず合法と通達で示す。この特例を使い、お墨付きを得た。

クルーの利用客は距離や燃費から算出するガソリン代などの実費と手数料(1分20円など)を降車後にクレジットカード決済する。実費はドライバー、手数料はクルーがもらう。ドライバーのやる気を高めるため、任意で謝礼を払える機能も備える。他者の謝礼額を参照でき、金額や払うかどうかは降車後に決める。

ドライバーと客はアプリでマナーなどを5段階で評価しあい、公表して安心感を高める。ドライバーは謝礼の有無が分かる前に客を評価するので、謝礼額を理由に低評価にできない。「払わない人が配車されにくくなることもない」(アジットの兼田里佳子氏)

アジットは与論島を抱える鹿児島県与論町でも昨年8月に実験、今年4月以降に観光協会と本格的に始める。バス路線が1つ、タクシーは8台と交通網が弱く、観光期の4~10月に提供する。与論町向けのクルーはタクシーも呼べる仕様だ。客の少ない時間はタクシーだけの配車を検討する。

アジットは2015年から東京都心で夜に限りクルーを運用してきた。都内の20代女性は「目的地を事前に指定するため道案内が要らない。ドライバーは運転好きな人が多く質が高い」と終電後の帰宅時に愛用する。同社は今後、問い合わせが増えた地方にも力を注ぐ。吉兼周優社長は「輸送手段の隙間を埋める」と強調する。

(大林広樹)

[日経MJ2019年3月13日付]

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