2019年9月17日(火)

電化によるCO2削減推進 サイバー攻撃対策 重視を
Earth新潮流 三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚氏

2019/3/11 6:30
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2月1日、米国の大手電力会社デュークエナジーが、1千万ドル(約11億円)の罰金を連邦エネルギー規制委員会に支払うことで合意した。電力の安定供給のための設備やシステム、経営陣の関与が不十分だという指摘を受けたもので、過去にない高額の罰金だ。

この一件は、今後の気候変動問題対策でも重要な意味を持っている。

二酸化炭素(CO2)削減の基本は、省エネルギーと、使用エネルギーの低炭素化だ。再生可能エネルギーや原子力など「排出ゼロ」とされる電源により電力を低炭素化できればCO2削減の手法の選択肢が増える。

欧州連合(EU)は2050年に温暖化ガスの正味排出量をゼロにすることを目指し、電気自動車(EV)の利用を推進する。ここでも電源における排出ゼロ化が前提だ。

地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、産業革命前からの温度上昇をセ氏2度未満に抑えることを目指している。これを実現するための国際エネルギー機関(IEA)のシナリオをみてみよう。

エネルギー消費量は途上国では増えるが、主要先進国では従来型の省エネに加えて、人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながるIoTによる物流の効率化などで26%も減る。しかし、産業や交通向け発電量は増え、主要先進国では40年までに8%増える。

IEAのファティ・ビロル事務局長の決まり文句は「21世紀は電力の時代。電化が気候変動問題のカギを握る」。エネルギー貯蔵技術のコスト引き下げや需給の平準化を通じ、電化率は今後高まるだろう。ただ、電化によるCO2削減にも弱点はある。

まずは災害による停電リスクだ。東日本大震災や北海道地震による停電で生活や産業が大きな影響を受けた。巨大台風、洪水、高潮、塩害なども発電設備や送電網に被害を与えることから、気候変動は電力システムの大きな脅威といえる。

また、リスクは自然災害だけではない。ウクライナでは15、16の両年に電力システムが悪意あるハッカーに乗っ取られ、大規模な停電が起きた。サイバーテロではないかともいわれている。

英国の大学などが同国における大規模停電の影響を分析した報告によると、金融や産業、空港や港湾などの物流設備が被害を受け、その影響が数年に及ぶと、被害総額は7兆~63兆円に上るという。同国の国内総生産(GDP)の2~20%に及ぶ金額規模だ。

また、同報告によるとサイバー攻撃の1割以上がエネルギー部門。ドイツの製鉄所などでもサイバー攻撃は確認されており、攻撃は日常化しているのが現実だ。

今後、IoTであらゆるモノがつながり、AIの活用が広まることを考えれば、サイバーセキュリティーは深刻な課題と認識すべきだろう。米国が電力会社に高額の罰金を科し、リスク低減のための努力を求めるのは当然といえる。日本でもガイドライン作りなどの取り組みが始まっている。

電力供給の安定はタダではない。競争原理導入による電力市場改革が進むなか、安全対策に十分な資金が回り、イノベーションが促進されるような仕組みが必要だ。災害やサイバー攻撃に負けない電力供給が、電化によるCO2削減の前提だ。

[日経産業新聞2019年3月8日付]

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