2019年6月27日(木)

「カメ止め」広告でも旋風 ファン巻き込み支持獲得
奔流eビジネス (アジャイルメディア・ネットワーク取締役 徳力基彦氏)

コラム(ビジネス)
2019/3/8付
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NIKKEI MJ

2018年に大きなブームを巻き起こした映画「カメラを止めるな!」。6日間の限定公開の予定だったが、200万人以上を動員する大ヒットとなった日本を代表するシンデレラストーリーと言える。その「カメラを止めるな!」が、広告の世界にも一石を投じているのをご存じだろうか。正確には一石ではなく、ふたつの事例がある。

「カメ止め」の出演者が再集結した「ハリウッド大作戦」の記者発表会

「カメ止め」の出演者が再集結した「ハリウッド大作戦」の記者発表会

ひとつ目は大正製薬の通販限定「リポビタンD ありがとうBOX」のプロモーションとして実施されている「カンシャを止めるな!」。ユーチューブにアップされている4分弱のPRムービーだ。劇場公開から139日連続で舞台挨拶のために劇場に通い続けた出演者の曽我真臣さんに感謝するドッキリ企画だ。

カメラを止めるな!の大ヒットの要因の一つとして、出演者による地道な舞台挨拶が大きく貢献していたというのはファンの間では有名な話。この活動の中心にいたのが曽我さんだったという。

映画本編公開後のメイキングのような、ファンにとっても感動できるリアルな感謝企画ということで話題を呼び、既に動画の再生回数は25万回を超えている。

もうひとつは、ネスレ日本がスポンサーとなり、3月2日に公開されたスピンオフドラマ「ハリウッド大作戦」。初公開日のアベマTVでの公開時には、16万超の視聴回数だった。

筆者も放送時のコメント欄をリアルタイムで追っていたが、興味深かったのは作品途中に挿入されるネスカフェアンバサダーのCM中でも、ネスレに対する感謝や称賛のコメントが多数投稿されていたことだ。

従来の映画放送であれば、CMはトイレタイムと揶揄(やゆ)されることもあったが、スピンオフ作品ではCMも作品の延長のコンテンツとして受け止められていた印象だ。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

ふたつの事例で興味深いのは、大正製薬とネスレ日本の両社とも、商品の「プロモーション動画」を作るのではなく、企画や作品そのものの制作を支援するパトロン的存在にまわっている点だ。

最近のプロモーション動画は、15秒というテレビCMの制約から解き放たれた分、表現の幅が広がり、面白動画やインパクトのある長尺動画も増えている。それでも商品やサービスをアピールするためのCMを有名な役者や映画監督に作ってもらうというパターンが多かったように思う。

しかし、大正製薬のドッキリ企画は、カメラを止めるな!の上田慎一郎監督やファンが曽我さんに感謝する機会にスポンサードしているし、スピンオフ作品は、多くのファンがひそかに期待していた続編の機会をスポンサードした。

「コンテンツマーケティング」が注目され、企業は単純にノイズとしての広告をするのではなく、読者にとって価値のあるコンテンツを生み出すべきだ、という議論は、ここ数年で珍しくなくなった。

今回のふたつのコラボ企画は、さらにその先のコンテンツマーケティングのあり方を示しているように感じている。

[日経MJ2019年3月8日付]

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